第33章 とっても小さな恋のものがたり ( 国見英 )
気力を振り絞って、いつもの場所へと歩き出す。
大丈夫、まだ頑張れる。
あと少し···もう少し···遠くに見慣れた人影が見えて来て···だけど···もう頑張れないやとへたり込んだ。
気が付けば、へたり込んだ視線の先には大きな靴が見えて。
ゆっくり顔を上げれば、大好きなあの人が覗き込んできた。
国「お前、大丈夫か?」
初めてあった時と同じ言葉をくれて、嬉しかった。
嬉しいけど、何も言えずに···はぁはぁと小さく息をするのが精一杯で、言葉の代わりにほろりと涙がひと粒落ちて行った。
国「大丈夫じゃなさそうだな···お前、家は?って聞いても、そんなんじゃ答えられねぇよな···どうすっかなぁ···よし、こういう時は仕方ない」
ふわり···と体が宙に浮く感じがして、思わず体を硬直させる。
国「っと、危ないから暴れるなよ?とりあえずオレん家に連れてく。ここにうずくまってるよりいいだろ」
クタリとした体が、ゆっくり···ゆっくりとどこかへ運ばれて行く。
ずっとずっと見つめ続けてた人が、こんなにも近い所にいる。
クン···と大好きな人の香りを吸い込みながら、その大きな胸元に顔をすり寄せた。
国「ただいま」
「あら、おかえり英···ちょっと、どうしたのその子は」
国「知らね···でも、道端にうずくまってたから連れてきた。何とかなんねぇ?」
「なんとかって···でも、随分具合い悪いみたいね···どこの子なのかしら···」
聞いたことがない声にうっすらと目を開けると、そこには大好きな人に良く似た感じの、女の人がいた。
国「どこの誰だかわかんねぇけどさ、ほっとけなくて。こいつ、学校行く時によく見かけてたヤツだし」
···私のこと、知ってたの?
「う~ん···どうしましょう···でも仕方ないわね、お母さん車出してあげるから、とりあえず病院つれていってあげようか?」
国「じゃ、オレも行くわ」
バタバタと大きな音がして、外の景色が流れ出す。
その間も、ずっと優しく抱き抱えてくれて···その温かさに、また目を閉じた。
どれくらい経ったのか分からないけど、チクリとした痛みで目が覚める。
ここ···どこなの?
初めて見る場所に戸惑いながら、キョロキョロと周りを見回す。
知らない場所だ···
国「あ、起きた」