第33章 とっても小さな恋のものがたり ( 国見英 )
早く来ないかな···
今日も朝から、あの人をここで待っている。
2つ先の角を曲がって来る姿を、目を凝らしながらずっと待っている。
話しかけるなんて自分には出来ないから。
ただ、見てるだけ。
···来た!
今日も眠そうにしながら歩いてる。
またここを通るのは···暗くなってからなのかな···
きっと追いつけないかもしれない速さで通り過ぎて行く後ろ姿を見送りながら、自分も行くべき場所へと歩き出した。
初めてあの人に会ったのは、自分がいじめっ子に囲まれて困ってた時だった。
前も後ろも、いじめっ子に通せんぼされて逃げられなくて。
押されたり、叩かれたり···怖いだけの時間が過ぎるのを我慢してた。
だけど、あの人は。
国「弱いものいじめはすんなっつーの!」
そう言って、いじめっ子達を追い払ってくれて。
国「お前、大丈夫か?」
震える自分に声を掛けてくれた。
···優しい人だと思った。
何も言わずに小さくペコリと頭を下げて歩こうとしたら、ヒョイっと抱えられて···
国「ケガしてんじゃん。ちょっと···ガマンしろよ?」
って、公園の水道場で擦りむいた所を洗ってくれた。
本当は、ありがとうって言いたかったけど。
なんかびっくりして···そのまま走って逃げちゃった。
それからずっと、毎日···ここでこっそり、あの人を見てる。
もしかしたら、気がついてくれるかな?
なんて、小さな期待をしながら。
雨の日も、晴れてる日も···毎日、同じ場所であの人を待ってる。
声をかけたら、びっくりされそうで。
怖くて、それも出来ないから···見てるだけ。
数日後、朝から蒸し暑かったけど、それでもあの人をそっと見送ってからその場を立ち去った。
日陰もなく、お日様が降り注ぐ場所にずっといたせいかフラフラする。
なんだかご飯を食べる気力もない。
だけど、暗くなる頃に···あの人がまたあの道を通るから···
同じ場所で、あの人が来るのを待っていたい。
少し眠って体を休めて、薄暗くなる頃に何とか起き上がって、いつもの場所へと向かう。
やっぱり···体が変だ。
フラフラするのは治ってないし、いつもよりぼんやりした景色が目に映る。
どうしたんだろう···立っているのも、歩くのも辛い。
だけど···あの人に会いたいの···