第32章 MENUETT ( 夜久衛輔 )
それから毎日、音が聞こえる度に···どんな子なんだろうと気になり始め。
屋上まで行けば···会えるのか?
いや、それじゃ怪しまれるだろ!
···とか、ひとり葛藤してて。
でも、会ってみたいという気持ちが段々と上回るようになって。
昼休みに、音に釣られて···屋上へと続く階段の前まで来ちまった。
「やっぱり···いきなり行ったら、ヤバいよなぁ」
研「なにが?」
「うわぁぁぁっ!け、けけ、研磨?!」
しかも今の聞かれた?!
研「やっくん、こんな所でなにしてんの?」
「そりゃコッチのセリフだっつーの!驚かせんなよ···ったく」
だいたい研磨はいつも、昼休みはゲームしてて教室から出ないんじゃないのかよ!
研「おれ、先生に言われて城戸さんに用事」
「は?城戸さん、て?」
研「昼休み、いつも屋上でフルート吹いてる」
それは知ってんだよ!
「いや、だから用事って?」
微妙に慌てながら聞き返せば、研磨はピラピラと1枚のプリントをオレに向けた。
研「クラス委員のプリント···渡しとけって言われた。おれと、城戸さん···委員会、同じ」
「はぁっ?!研磨クラス委員なのか?!初耳だぞ?!」
研「別に、やっくんには言ってなかっただけ」
そうだろうよ!!
研「それで···やっくんは、なにしてたの?」
「オ、オレは···だな。その、いつも聞こえてくるから、どんなヤツが、とかだな···」
あれ、オレなんで研磨に正直に言ってんだ?!
研「ふ~ん···じゃ、やっくんも···行く?」
「なっ?!なんでオレが?!」
研「行かないなら、別にいい、けど」
待てよ···これはもしかして、チャンス?!
オレ1人じゃ、怪しまれてもおかしくはない。
けど、研磨と一緒だったら···別に同じ部活だし、せ、先輩と後輩とかだし。
···怪しいところは、ない。
「い、行く。研磨に付き合う」
研「そう。じゃ、行くよ」
「お、おぅ」
先に階段を上がっていく研磨のあとを、ゆっくりと上がって行く。
クロはカワイイとか言ってたよな?
クロがそう言うってことは、相当レベルが高い可愛さなんじゃないか?と考えながら、一段、また一段と段を上がる。
研「はぁ、疲れた」
そう言ってドアを開けた先に、ひと目会いたいと思った相手が···いた。