第32章 MENUETT ( 夜久衛輔 )
いや、ちょい待て?!
いま本人から聞いたって言ったか?!
黒「なに?その子の事が気になっちゃってる系?」
···うっ。
黒「ま、ちょっと可愛かったけど、オレのストライクゾーンではないな。オレはこう···バイーンとして、キュッとしてて···エロっちい感じの方がいい」
「そんなこと聞いてねーし!」
でも、可愛かったのか···あ、いやいや。
別に可愛かろうが可愛くなかろうが、オレには関係ないじゃん?!
ただちょっと気になるのは。
いつも聞こえてくる曲が、なんて曲なのか···だけだ。
黒「2年3組、城戸 紡」
「···は?なに、急に」
黒「べっつにぃ?ひ・と・り・ご・と···デス」
っかぁぁぁぁぁ!!
なんかムカつく!
なんなんだよクロのヤツ!
気になるだろうが!
黒「ちなみに彼氏はいなくて、好みのタイプは···」
「タ、タイプは?」
べつに興味があるわけじゃないぞ!
今後の参考の為に、調査してるだけだ!
もったいぶってなかなか続きを言わない黒を軽く睨みながら、早く言えよと目で訴える。
黒「紡ちゃんの好みのタイプは···だな···」
だから!
早く言えっての!
黒「優しくて···」
うんうん···優しくて?
黒「一緒にいて楽しくて···」
一緒にいて楽しくて?
黒「···背が高い人」
背が高い人···背が···
ハハッ···聞かなきゃ良かった···
なんで最後の最後にそんなのが来るんだよ!
しかもオレが結構気にしてるトコじゃん!!
あれ?
なんでオレ、ショック受けてるんだ?
黒「すみませんねぇ、全てにおいて好みのタイプがオレに当てはまっちゃって?」
ニヤリと笑いながらクロがフフ~ンと鼻で笑う。
「クロ···ひとつだけ教えてやる。お前が当てはまってんのはな、背が高いってトコだけだ」
黒「え、そう?オレは優しいよ?」
「オレには優しくないんだよ!」
ったく···クロのヤツめ。
それにしても、女子ってなんで···好きなタイプに背が高いとか入れるんだよ。
別に背が高くなくったって、いいだろ。
ちぇっ···っと少しいじけながら、まだ風に乗って聞こえてくる曲に耳を傾けた。