第2章 子羊とたくさんのオオカミ?!(縁下 力)
山「お腹痛いなら、オレ城戸さん呼んで来ましょうか?!」
追い打ちをかけるように言う山口に、俺はほっといて平気だからと言った。
澤「何の騒ぎだ?外まで聞こえてるぞ?」
顔を洗いに行ってた大地さんが戻り、首を傾げながら俺達を見た。
『あ!澤村先輩!チョコあげます!』
姿を見つけた城戸さんが、スガさんと一緒に俺達の所へ戻って来た。
『はい!アーンして下さい?』
澤「えっ?!アーンて・・・えぇっ?!」
そうだよな、これが普通の反応だよな。
菅「大地、紡ちゃんがみんなにアーンしてくれてんだから、遠慮すんなって!ね、紡ちゃん?」
『そうですよ!遠慮はなしですよ?じゃ、アーンして下さい?』
大地さんはチョコを摘んだ城戸さんに迫られて、半ば押し切られるようにそれを食べた。
菅「な?紡ちゃんにアーンして貰うと、格別な味がするだろ?」
コソッと言うスガさんに、大地さんは、何言ってんだかとこぼした。
『澤村先輩・・・あんまり好きじゃないですか?』
しょんぼりする城戸さんに、大地さんが慌て出した。
澤「いや、そんな事ないって!じゃあ今度は俺がアーンしてあげるから口開けて?」
城戸さんの持っている袋からひとつチョコを取り出す大地さんを見て、モヤッとするのは・・・俺の気のせいだろうか。
菅「アーッ!大地ズリぃぞ!」
澤「うるさい、部長の特権だよ」
菅「どこで部長の特権使ってんだよ・・・」
澤「はい、城戸さんアーン?」
言われるままに小さな口を開ける姿は、まるで雛鳥の様で・・・
澤「どう?美味しい?」
『はいっ!甘くて美味しいです!』
口をモグモグさせながら言う城戸さんを見て、心がほっこりとする。
清「澤村、運動部共用の洗濯機が混んでて、洗うのもう少し後になる」
俺達の着替えを洗いに行ってくれていた潔子さんが戻って来た。
澤「順番は仕方ないよ。1個しかないしね」
『清水先輩!チョコあげます!・・・はい、どうぞ。アーンしてください』
清「ありがとう。じゃ、あーん・・・うん、美味しい」
この2人のやり取りは、何とも絵になるな。
ボンヤリと眺めていると、城戸さんが木下と成田にまでチョコを食べさせた。