第2章 子羊とたくさんのオオカミ?!(縁下 力)
「お前達、顔が赤いケド?」
さっきのお返しに、2人に耳打ちする。
木「うるせぇな縁下!人のこと言えるのかよ」
うっ・・・それを言われると返す言葉も出て来ない。
『あーっ!澤村先輩、私にアーンとかするからチョコが手に付いてる!』
言われて手を見て、あぁ、と大地さんが返事をした。
澤「平気だよ、こんなの舐めちゃえば」
「わぁっ!!ダメですよ大地さん!」
指先を口へと運ぶ大地さんを見て俺は咄嗟に手を掴む。
もしかしたら、うっかり間接キ・・・
脳裏に浮かんだ言葉に、自分で照れる。
澤「縁下?急にどうした?」
「ボールにチョコ付いたら落ちませんから洗いましょう!ね?そうだよね城戸さん?」
『縁下先輩の言う通りですよ?私も一緒に行くので仲良く手洗いしましょう?』
・・・仲良く?
いや、普通に洗おうよ。
『じゃ、行きましょ澤村先輩?』
城戸さんが大地さんの手を取り水道場へ行こうと促した。
「あ~っと、お、俺も洗いに行こうかなぁ・・・なんて」
大地さんが、縁下も?なんて言っているけど、それは聞かなかったことにして。
大地さんを挟んで俺と城戸さんとで手を引きながら水道場へ向かう。
成「やれやれ、だね?木下?」
木「全くだぜ・・・頑張れよぅ、縁下~?」
後ろから、意味がわからない2人の声が聞こえてくる。
俺はそんな2人は放置して、3人仲良く並んで手を洗う。
『澤村先輩も縁下先輩も、蛇口他にもあるのに何で私達3人並んでるんです?』
石鹸を泡立てながら、城戸さんが首を傾げる。
澤「いやぁ。何となく?」
・・・大地さん、絶対狙っただろ。
『お2人が隣に並んだら、ますます私がちびっ子に見えちゃうじゃないですか・・・』
「いいんじゃない?女の子なんだから小さくてもさ?」
『そうですか?だって影山はいつもお子様とか呼ぶし』
口を尖らせながらブツブツ言う姿も、可愛らしくて仕方ない。
ここにはオオカミが多い。
俺も含めて、か?
こっそりと横目で城戸さんを覗いてみる。
『あっ、シャボン玉出来た~!』
フゥ~っと息を吹いて泡を飛ばす無邪気な笑顔に心を跳ねさせ、俺はそのシャボン玉の行く末を見ながら空を仰ぐ。
「今日も暑いよなぁ・・・」
そう呟いて、パチンと弾けるシャボン玉を見た。