第20章 未来予想図 ( 東峰旭 生誕 )
「···ちゃん、紡ちゃん。ちょっと、」
ん···、母さ、ん?
それに、いま···紡、って?
「お父さんがハーゲンダッツ買って来たから一緒に食べましょ?」
『私も、ですか?』
「そう!お父さんたら、紡ちゃんは旭の様子を見に来たって言うのにウキウキしちゃってね~。急に身支度すると思ったら、コンビニ行って来るって言ってアイス買って来たのよ」
『あははっ、旭のお父さん面白~い』
···ホントに紡がいるのか?!
「でさ、どうせ旭寝てるんだし?紡ちゃんに旭菌が伝染ったら大変だから、リビングに降りてきなさいな?」
母さん···旭菌って、なに?
まだズキズキとする頭をゆっくり動かし、薄目を開ける。
そこに見えたのは、ドアから体半分出して笑う母さんと···
オレのベッドの横で雑誌を広げて座る、紡。
···紡?
「紡?!なんでいるのっ?!」
『わっ!び、ビックリした!』
驚きのあまり、1日寝たきりだった事も忘れて飛び起きた。
···けど。
グラリ···視界が回る。
『旭?!』
「あぁ、ご、ごめん···紡。ちょっとグラッとした···」
膝立ちで抱きとめられ、埋めた首元から感じる香りに···本物の紡がここにいるんだ、とリアルに感じる。
『ずっと高熱で寝てたんだから、急に起きたら危ないでしょ···っていうか、旭···重い』
「コラ旭!紡ちゃんに伝染ったら困るでしょ!早く離れる!!」
グイッと母さんに押し返され、ベッドにもたれ掛かる。
「いつの間に来てたの?···大地達との初詣は?」
渡された濡れタオルで顔を拭きながら、そんな言葉しか出て来ない自分が情けなくなる。
『ここへ来たのは、結構前かな?澤村君達との初詣は、行かなかった』
「え、なんで?」
『なんで?って。旭がこんなに熱出してるのに、心配で行けるわけないよ。それに、旭と一緒に行けないなら初詣、行く意味ないし』
···なんか、ちょっと嬉しい。
そう思うのは、大地達に申し訳ないけど。
でも、なんか嬉しい。
「あ、でもドタキャンとかダメだろ?」
『ドタキャンなんかじゃないよ?ちゃんと私、みんなとの待ち合わせの場所までは行ったんだから』