第19章 たとえばそれは、春風のように ( 澤村大地 生誕 )
やっぱり、俺が嫌いになった···とか?
俺、自分で気が付かないうちに何をしでかしたんだろう。
こういう時って、アレ···だよな?
こう、自分の胸に手を当てて聞いてみろ!的な?
何気なく、胸に手を当てて考えてみる。
···わからない。
やっぱ紡本人に直接聞いてみるしか?
待て、なんて聞くんだ?
俺と別れるつもりなのか?
···なんか違うな。
じゃあ。
俺に悪い所があったら言ってくれ!頼む!
···これも違うな。
これからもずっと大事にするから一緒にいてくれ!
···プロポーズかよっ!!
あぁもう!
なんか色々考えすぎて纏まらない!
だけど、もし本当に···サヨナラ、とか言われたら。
俺、どうすればいい?
泣いて縋って、別れたくない!とか?
···女々しいな。
落ち着かずに部屋をウロウロとしていた足が、ピタリと止まる。
もし、そうだったら。
···全てを受け入れよう。
もはや、それしかない、な。
ベッドに倒れ込み、足掻く。
俺と別れる結末に至っても、それがお互いの為だというなら···心を広くして受け入れよう。
そう。
空より広く、海よりもまだ···深い心の男を演じよう。
最後くらい、澤村大地は優しい男だった。
そう思ってくれれば、いい。
···本当は嫌だけど。
不幸中の幸いなのは、まだ···家族の誰にも紡を紹介していなかった事だ。
可愛い彼女が出来ました。
でも、もう別れました。
そんなんじゃ俺、次の彼女が出来るまで家族中に笑いものにされてしまう。
高校生にもなって、手足をバタバタとして足掻く。
菅「何してんの大地?」
ホント、なにやってんだろうな俺。
···え?
ガバッと起き上がり、声の主を見て全身が硬直する。
「スガ···?」
菅「よ!」
「よ!じゃないだろ!いつの間にいたんだよ、驚くだろ」
菅「いつの間にって、さっき出掛けた帰りに大地んとこ寄るね?って、LINEしたじゃん?分かったって返事も来てたし?」
···忘れてた。
菅「ちょうど家の前で大地のお母さんに会ってさ、そのままあがらせて貰ったから部屋まで来たんだけど?」
「そ、そっか!そうだったよな、アハハ···」
紡からの電話の事で頭がいっぱいで、忘れてた。