第18章 雪···ひとひら ( 城戸 桜太 X'mas特別番外編)
この位の子供たちから見れば、大人はみんなオジサンに見えちゃうんですよ?と、せめてもの慰めを言っているうちにご両親が到着し、意識回復した女の子といくつかの会話をする。
立「話したい事はたくさんあるでしょうが、現状と今後の事を説明させて下さい」
立花先生が頃合いを見計らって、一歩前に出て説明を始める。
こういう時、まだまだ俺は駆け出しの研修医なんだと痛感するんだ。
一通りの説明を終え、立花先生が病室に送り届けるように看護師に言って、ご両親は何度も女の子を振り返りながら部屋を後にした。
立「落ち着いたところで、君はもう少し朝まで寝なさい?たくさん寝たら、それだけ早く治るから」
「ひとりでねるの、こわいもん···」
立「そう言われてもなぁ」
確かに、あれだけの事故のあと意識不明の状態で運び込まれ、目が覚めたら覚めたで見知らぬ病院と見知らぬ大人に囲まれていれば、怖いのも仕方ない。
ましてや今は、夜中の病院だ。
「だって、こわいもん···」
「いいよ、眠ってしまうまで先生がずっと一緒にいてあげる」
立「城戸先生?」
「構いませんよね?いわゆる、緊急事態ですから」
有無を言わせぬ笑顔を向けて、ね?と付け足してみる。
立「う~ん···緊急事態なら仕方ない、か。但し、条件がひとつある。寝付いたあとは、城戸先生もちゃんと休む事。これが条件だ」
「了解しました」
それを聞いて、立花先生が俺の肩を静かに2回叩いて部屋から出て行った。
「じゃ、梓ちゃん?眠れるように、何かお話を聞かせてあげるよ。何がいいかなぁ、シンデレラかな?白雪姫かな?」
この類の物語なら、丸暗記してあるから得意分野だ。
···諸事情で。
布団を掛け直し、手も繋ぎたいという可愛らしい申し出に答えながら、物語をひとつずつ聞かせてあげる。
それは白雪姫から始まり、シンデレラになって、そして人魚姫へと続いて行った。
しかしながら、さすがに3つ目のストーリーともなれば些か眠気には勝てないらしく、時折うつらうつらしながら、その続きは?と強請るようになって行った。
「···泡になって消えてしまいました。おしまい」
「まだ、ねむくな、い···」
「じゃあ、あとはゆっくり眠れるようにトントンしてあげるよ。寝付くまでは、ちゃんと一緒にいてあげる」