第18章 雪···ひとひら ( 城戸 桜太 X'mas特別番外編)
立「ほ~ら、ベロベロバァ!···これもダメか···」
集中治療室のドアの前で、立花先生の嘆きが聞こえる。
赤ちゃんじゃないんだから、ベロベロバァって···
半ば呆れながらドアを開けると、そこには妙に怯えた女の子と、辟易した立花先生がいる。
「立花先生でも、苦手な事はあるんですね」
苦笑を見せながら言えば、俺の顔を見てあからさまにホッとされる。
立「ハハッ···城戸先生、助かった。小児科は専門外だからね」
そう言って返す立花先生に、専門外も何も···と更に返す。
立「とにかく、何とか助けてくれよ」
仕方ないですねと言って場所を代わり、診察の準備をする。
「梓ちゃん、よく頑張ったね?···おかえりなさい」
そっと頭を撫でて気持ちを落ち着かると、それまでの状況がウソのように泣き止んだ。
立「さすが将来有望株···」
「立花先生、そんなこと言ってる場合じゃありません」
ピシャリと言って、また女の子と向かい合う。
「お母さんとお父さんも無事だから、心配しなくていいよ?もうすぐ看護師さんがここへ連れて来てくれるから」
何度も頭を撫でては、少しずつ心を解いていく。
その前に、モシモシしてみようか?と言って、聴診器を見せるとなぜだか首を振り続け、俺の後ろをずっと見続けている。
「こわいオジサンいるから、ヤダ···」
オジサン···?
振り返れば、立花先生しかいない。
立「お、オジサンってオレの事か?···うわぁ、なんかショックだ···」
不覚にも、肩を揺らす。
「大丈夫、怖いオジサンじゃないよ?ちょっと、変わってるだけ」
立「城戸先生、訂正する場所はソコじゃないよね?」
小さく拗ねる立花先生を見て、あれ?違っちゃいましたか?と意地悪に笑う。
「じゃ、ちょっとだけポンポンしようね?」
頷くのを確認して、聴診器を手のひらで充分に温めてから胸に当てて行く。
「うん、大丈夫だね。でも、この機械たちは明日の朝までガマンしてね?」
「あしがいたいのも、すぐなおるかなぁ?」
「それは···もう少しかかるかなぁ?でも、このオジサンに頑張って貰ったら、夏休みには海やプールに行けるようになるから、一緒に頑張ろね?」
立「城戸先生まで、オジサンとか」