第18章 雪···ひとひら ( 城戸 桜太 X'mas特別番外編)
あからさまにおかしな···あぁ、立花先生は普段から奇抜な行動が目立つけれども?
とにかく、クッキーから出した紙を眺めてニヤニヤする立花先生に、ちょっと距離を置く。
「そちらには、何が書いてあったんです?」
缶コーヒーに口を付けながら、小さなメモ紙を白衣のポケットにしまう。
立「あ、気になっちゃう?じゃあ仕方ない、見せてあげましょう···ほ~ら、大好き!だって!」
それは立花先生宛かと聞かれたら。
答えはNO!です。
「とりあえず、言っておきますが···それは立花先生に···では、ありませんからね」
コホン、とひとつ咳払いを挟みながら言う。
立「城戸先生、もしかしてヤキモチ?」
「違います」
立「即答なのが怪しい」
「普段から怪しいのは立花先生の方ですよ」
立「オレかよ!」
「そうです」
立「例えばどこが怪しい?」
「全部ですね」
立「イキナリ全部かよっ!」
まるで慧太と話しているかのような会話のテンポに、調子が狂う。
···家か、ここは。
そんな気持ちになり、フッと脱力した瞬間にポケットの院内電話がけたたましく鳴り出した。
着信相手が救急搬送口と分かり、すぐに応対に出る。
「城戸で···はい、いま当直室です」
« 飲酒運転者による多重事故現場から負傷者6名搬送されます »
飲酒運転とか···しかも負傷者が6名も。
「分かりました、受け入れ準備します」
« 搬送人数が多い為、当直医全員招集です。そこに城戸先生以外は? »
「整形の立花先生なら、ここに。同じ事を伝えます」
« それから、負傷者の中に意識不明の7歳女児がいます »
7歳の、女の子···?!
意識不明って···
「カラーは?!」
一瞬脳裏に、小さな頃の紡が浮かんでしまい口調が強くなる。
« トリアージ···赤です »
なんて、ことだ···
「分かりました、搬入後直ちに処置が行えるよう準備しましょう」
« 宜しくお願いします »
通話を切ると同時に、立花先生は普段のチャラチャラした雰囲気から医師の顔になる。
立「急ごう城戸先生、詳細は救搬室に向かいながらでいい」
「はい!」
白衣を翻しドアから飛び出す。
静まり返る夜更けの廊下を、俺と立花先生は駆け出した。