第18章 雪···ひとひら ( 城戸 桜太 X'mas特別番外編)
立「うっわぁ、今夜の城戸先生はご機嫌ナナメ?」
立花先生···あなたが普段と変わらず、なだけですよ。
立「別に特別用事があるわけじゃないけど、こんな夜に当直勤務とか退屈してるんじゃないかと思ってね。ほいっ、オレから愛のプレゼント」
ポンっと缶コーヒーを投げ渡され、これが愛のプレゼントなら随分安上がりだなと、胸の奥で毒づく。
「愛···が届くかどうかは分かりませんが、ありがたく受け取っておきます。それから俺達の仕事は、いついかなる時も退屈な方がいいのでは?」
立「ま、そりゃそーだ。それより、夜勤のナースが城戸先生を探してたぞ?モテる男はイイねぇ」
「俺を、ですか?」
病棟で誰か容態変化でもあったのか?
いや、それならコールが鳴るはず···
白衣のポケットから院内専用の携帯を出しても、着信もなにもない。
「小児科病棟のナースでしたか?」
立「いーや?どっちかって言ったら、ウチのナースかな」
「整形の?」
今日は特に頼んでいる用事はなかったと思うけど。
立「マジメだなぁ城戸先生は!今日は何の日かお忘れかい?···ナースが城戸先生のハートを狙い撃ちしようと、こぞってクッキーやらカップケーキやら持参してるんだって!」
ガハハ···と盛大に笑いながら、立花先生が俺の肩を何度も叩く。
「あぁ、そういう事ですか。でも、残念ながら俺のハートは···既に、たった1人に撃ち抜かれてますから」
言いながら、後で一人で堪能しようかと思っていた物を鞄から出して小さく掲げる。
「妹が、持たせてくれたんですよ。手作りクッキー」
クリスマスなのに当直で一緒に過ごせないからと、朝から作っていたらしい。
「宜しければ、おひとつどうです?コレのお礼に」
さっきの缶コーヒーを指さして、ラッピングのリボンを解く。
見せびらかして終わり···なんて、子供じみた事はしない。
袋からクリスマスらしいカラフルなクッキーをひとつ取り出して、立花先生に渡して自分もひとつ、齧る。
···ん?
立「おっ?これは···」
フォーチュンクッキーか。
クッキーの中に入っている紙を取り出して開いてみる。
« お仕事頑張ってね! »
はい、頑張ります。
思わず···顔が緩む。
立「いやぁ、これは照れますなぁ」