第17章 悪夢は何度でもやって来る ( 烏養 繋心 )
嶋「ま、もっとも?オレの被害なんて繋心のに比べたらなんてことないけどな。なんせ繋心は憧れのマドンナちゃんの目の前で、」
「だぁぁぁっ!それを言うなっ!!」
嶋「だってよ、オレはそのマドンナちゃんと同じクラスだったんだぜ?そのマドンナちゃんが、噂の王子様に慰められながら教室に戻って来たと思ったら、直後に繋心のズボン脱がしの話を聞いて、みんなドン引きしたんだからな」
頼む嶋田!
それ以上はもうやめてくれ!
嶋「そんな苦い思い出も、今じゃ良きかな···なんじゃないの?」
バカヤロ!ちっとも良きかなじゃないってんだよ!
悪夢だ悪夢!
今だに夢に出たんだからな!
ケッ!と息巻いて嶋田の缶コーヒーに肉まんの欠片を落し入れる。
嶋「うわ、繋心なんて事を?!」
「うっせ。手違いだ」
嶋「何の手違い?!···ま、いっか」
「飲むんかい!!」
残りの缶コーヒーを飲み干し、嶋田が立ち上がる。
嶋「ごちそーさん!さぁて、店に戻って品出しでも手伝うかねぇ」
う~んと伸びをして、着崩れたエプロンを正す。
嶋「さっきの話だけどさ?やってみてもいいんじゃない?···って、オレは思うけど?」
「だから、」
嶋「だって面白いと思わないか?自分の采配次第で、ひとつのチームが伸びるか、はたまた···落ちるかなんてさ?」
「落とすわけに行かねぇから悩むんだろうが」
もし、コーチなんて引き受けてチームが滅亡的になったら···
そいつらの夢をオレが潰すことになるんだぞ?!
責任重大じゃねぇかよ。
嶋「迷ってるって事は、引き受けるキッカケを探してるんじゃないの?ん?」
キラリと光るメガネを押し上げ、嶋田がニヤリと笑う。
「悩んでんだっつってるだろ!どうやったら断りきれるかをな!」
噛み付く勢いで言い返せば、嶋田は更に笑いながら手を振りじゃあな?と帰って行った。
クソ···おかしな難題を残して帰りやがって。
その日は夕方まで何かとイラつきながら店番をしていた。
······はずなのに。