第17章 悪夢は何度でもやって来る ( 烏養 繋心 )
そんでもって、バレー部員はオレの後輩に当たるワケで。
···ムリだよなぁ。
あそこにはオレの青春が詰まってんだ。
けどよ?
指導者が居ねぇっつーのも、伸び代があるヤツらだったら可哀想だしなぁ。
いっそ、ジジイに···いや、あんな老いぼれに頼んだら、今度こそ仏さんになっちまう。
1回くらい、コッソリ練習覗いて見ても?
いや、ダメだな。
オレはコーチなんて向いてねぇよ。
どっちかっつったら、混ざってプレーしてぇしなぁ。
白んで行く空を見ながら、煙草をもみ消し窓を閉めた。
とりあえず、また寝るか。
今日も店番だからな。
どんだけ寝てても、時間になりゃ母ちゃんが起こすだろ。
って。
しっかり二度寝を楽しんだ後の、開店直後。
客に成りすました馴染みのヤツがやって来た。
嶋「ウーっす」
「いらっしゃ···お前かよ」
自分トコのエプロンしてるって事は配達の途中か?
嶋「そう邪険にすんなって。はいよ、繋心の母ちゃんから配達頼まれたから持って来た」
ズシリと重い袋をオレにふたつ渡し、嶋田はレジ前のテーブル席に座った。
「配達終わったんなら、帰れ帰れ。商売の邪魔だ」
嶋「いいじゃん、どうせヒマだろ?」
「お前なぁ!堂々と店内にいながらヒマだろとか!」
···まぁ、ヒマだけどよ。
ケッと笑いながら缶コーヒーを放ってやり、オレも向かいに腰掛けた。
嶋「サンキュー···あぁ、ひと仕事終わったあとの甘い缶コーヒーが染み渡るなぁ」
「缶コーヒーで悪かったな」
嶋「繋心、ついでに腹減ったから肉まんくれ」
「この店を潰す気か!」
嶋「繋心~、奢って?」
「なんでだよ!」
···とは言ったものの、嶋田にはこないだ飲み代奢って貰ったからな。
肉まん奢るくらい安いモンか?
「1個な、1個」
嶋「ピザまんも!」
仕方ねぇ、奢ってやるか。
皿なんてそもそもねぇから、中華まんを入れる袋を皿替わりに下に敷いて渡してやる。
3つ分の金を払い、オレも肉まんを齧りながら缶コーヒーをすすった。
嶋「そういや繋心、あの話どーしたよ?」
こいつの言うあの話っちゃ、烏野バレー部のコーチの話だ。
「さぁな」
嶋「またまたぁ、そんなはぐらかすなって。で?受けんのか?」
「受けるつもりは今のところない」
嶋「へぇ···」