第16章 autumn wedding ( 青城3年組 )
~epilogue~
『ねぇ、ちょっとコレ見て?』
荷物を解きながら、1冊のアルバムを取り出し彼を呼んだ。
「なんだ?こんなところにアルバム持ってきたのか?」
自分の荷解きの手を止めて振り返る彼を見て、私は頷いた。
『こんな所···とか、言わないでよ。ここはさ、あの頃からずっと、私の憧れの場所なんだから』
「···だったな」
分かれば宜しい!と笑うと、彼も笑いながら私の側へと歩み寄る。
「へぇ、懐かしいな···」
『でしょ?!みんな、あの頃と全然変わってない感じがしない?』
アルバムの中の1枚を指差して、ね?と同意を求めると、彼は穏やかに笑いながら私の肩を抱いた。
「オレ達は変わってないかも知れないけど、紡は随分変わったんじゃないか?」
『ちょっと~?それはどういう意味かな?ん?』
抱き寄せられた体を少し離しながら、彼の顔をジッと見つめて瞬きをする。
「変わっただろ?···その、アレだよ···」
『ん~?アレって何かなぁ?』
顔を逸らしながら言う彼の顔を追って、悪戯に覗き込めば、ちょっと照れながらも···また、私を抱き寄せる。
「···あの頃よりも、ずっとキレイになった」
そのひと言が、私の胸をほわんと暖かくする。
『もしかして、酔ってる?』
「アホか、到着早々なに言ってんだ。でも、酔ってもいいかもな?」
まったく···結局はそれなんだから。
『はいはい、じゃあルームサービスでも』
そう答えて立ち上がろうとする私を彼が引き寄せ、耳元で囁く。
「ばーか。オレが酔いたいのは···紡に、だよ」
···!
顔が···熱い···
『う、わぁ···そんな恥ずかしいこと、よく言えるよね···ビックリしちゃう』
「そうか?その割りには紡、顔が赤いみたいだけど?」
『う、うるさい!うるさい!うるさーい!』
熱くなる一方の顔を隠すように、俯きながら彼の胸に顔を押し当てる。
そんな私を、彼はケラケラと笑いながらも腕の中に閉じ込めた。
「あの、さ?今更だけど···ホントに···オレで良かった?」
『良くなかったら、今ここにはいないでしょ?』
彼の背中に腕を伸ばしながら、その体に心を寄せる。
「なら、良かった」
『じゃあ聞くけど。そっちこそ、ホントに私で···良かったの?』