第16章 autumn wedding ( 青城3年組 )
チャペルの鐘が青空に鳴り響き、色とりどりの風船も、その空の青に吸い込まれていく。
『素敵なふたり・・・』
さっきとは違う、うっとりとした・・・ため息が漏れる。
及「オレなら今すぐ、着せてあげるけど?」
『及川・・・?』
岩「やっぱり女はウェディングドレスに憧れるモンなのか?」
『岩・・・女心分かってないね・・・』
花「なんなら今すぐ、オレと飛び入り参加しちゃう?」
『アホか花!』
松「オレは本気で考えてもイイけど?」
「松までやめてよ・・・」
まったく・・・この4人は・・・
やや呆れた時、素敵なふたりを囲んでいたギャラリーが湧いた。
『な、なに?!』
その歓声に驚き、思わず凝視してしまう。
及「これから、ブーケトスがあるみたい」
ブーケトス・・・花嫁が投げるブーケが届いた人は、次の花嫁になれるっていう、幸せのバトンタッチの・・・あれ?
・・・ここまで届いたりしないかな?
なんて、ちょっと期待しちゃったりして。
ー じゃあ、投げますよ~! ー
花嫁がみんなに背中を向け、ブーケを高々と構えた。
ー せぇ~の~!!! ー
誰の手に、届くのだろうか?
その幸せの行方を、ボンヤリと見つめ続ける。
及「紡ちゃん!」
岩「紡!しっかり前見ろ!」
花「つーちゃん、思いっ切り腕伸ばせ!」
『えっ?腕?!』
松「落とすなよ紡!」
花に言われるままに、精一杯に腕を伸ばす。
私の目の前を、ゆっくりとブーケが通過して・・・
ポスンと、腕の中に・・・落ちた。
『う、うそ・・・』
思わず呟くも、腕の中には花嫁が抱えていたブーケと同じものが、風に遊ばれながら花びらを揺らしている。
松「ナ~イスキャッチ、紡」
及「これでオレとの未来は確定だね!」
花「つーちゃんに腕伸ばせって言ったのはオレだ!」
岩「ホントお前らうるせぇ・・・」
まじまじとブーケを眺めて、ホントに私が受け取っても良かったのかと不安になり、花嫁に顔を向ける。
周りのギャラリー達は唖然としていたけど、その輪の中から花嫁がゆっくりと歩み寄って来た。
『あ、あのっ!すみません、通りすがりなのに、ブーケを・・・』
なんとなく居心地が悪いような気もして、ブーケを掲げて花嫁の顔を見た。