第1章 〖 恋よりも、愛よりも 〗人気投票1位記念 城戸 桜太
この子もいつか・・・誰かを愛して、誰かに愛される日が来るのだろう。
そう思うと、心なしか胸が痛むのはなぜだろうか。
「おいで、紡」
グラスを離し、いつもの様に軽く腕を開く。
『子供じゃないって、言ってるのに・・・』
そう言って紡は腕には入らず、俺と慧太の間に立った。
慧「桜太・・・ふられたな?」
それを見て、慧太が俺にニヤリと笑う。
「・・・うるさいよ」
『2人とも、変なの』
黒目がちな目をキラキラと反射させながら、紡が俺達を見る。
「変なのは、いつも慧太だろ?」
慧「オレだけかよ!」
お互いに顔を合わせ、同時に笑い出した。
『今日は、凄く星が見える夜だね』
「そう、だね。今夜は特別なのかも知れない」
俺の言葉に、紡が真剣な眼差しを向けてくる。
「どうかした?」
『やっぱり・・・ちょっとだけ』
体の向きを変え、紡が俺の腰に腕を回す。
「甘えん坊は、大人になっても健在ですか」
軽く微笑み、頭を撫でる。
『違うよ・・・なんだか、桜太にぃが泣いてる気がしたから・・・』
慧「おっと・・・桜太のポーカーフェイスもこれまでか?」
「慧太うるさいって・・」
顔に出ないようにひた隠していたのに。
紡に見破られるとは、俺もまだまだって事だな。
「一緒に、星を見ようか」
小さな肩を抱き寄せながら、慧太と3人で空を見上げる。
瞬く星は、今の俺には眩し過ぎて。
・・・胸を締め付けた。
『あっ!流れ星!見た?一瞬だから、お願い事できなかったよ・・・』
慧「どうせお前のお願いは、背が伸びるように、とかだろ?」
『・・・違うから』
慧「どうだかね?」
『もう!慧太にぃのヒゲ!』
慧「いや、ヒゲは関係ないだろうよ!」
『心が清くない慧太にぃはヒゲでいいの!』
慧「なんだと?よーし、分かった。今からお前に、この慧太サマのヒゲの魅力を語ってやろうじゃないか。ちょっと来い紡!」
慧太が俺から紡を剥ぎ取り、そのまま抱えてリビングへと戻る。
「まったく、あの2人はいつも騒がしいな」
ひとり呟いて、瞬く星を見上げ、どうしても滲んでしまいそうな目を瞬きで押さえ込む。
梓、もう暫くは約束守れそうにないかもな。