第1章 〖 恋よりも、愛よりも 〗人気投票1位記念 城戸 桜太
手紙を読み終え、そっと封筒に戻し胸にしまう。
梓・・・
まず、俺は梓に謝らなければならないよ。
君が遠くに行ってしまったと知ったあの日・・・
数え切れない程の思い出を胸に抱えながら、枯れるほど泣いてしまったからね。
約束・・・守れなかった。
枯れるほど泣いたはずなのに・・・
なぜ、こんなにも今・・・視界が滲んで行くのだろう・・・
カラン・・・と音を立て、グラスの氷が小さく揺れた。
それに手を伸ばし、小さくなった氷を泳がせながら飲み干してみる。
喉を焼くような味と、痺れるような甘さが、全身を熱く巡っていく。
「アホだろ慧太・・・こんなの渡してくれて」
ため息を逃がしながら、小さく呟く。
慧「呼んだか?」
不意に掛けられた声に、思わず苦笑を見せる。
慧「はいよ」
差し出されるグラスを受け取り、さっきと同じ物だと分かると、俺は更に苦笑を浮かべる。
「俺を酔わせて、どうするつもりだよ・・・」
そう言いながらも、グラスに口を付けて見せる。
慧「さぁてね。たまには・・・そういう日があってもいいんじゃねぇの?」
同じようにグラスに口をつけながら、慧太が柵に寄りかかった。
俺も慧太の隣りに立ち、何度もグラスに口をつけながら星空を見上げた。
梓、俺達・・・いや、俺は・・・か。
恋を思い出すには、オトナになり過ぎて。
愛を芽吹かせるには・・・遅すぎた・・・
君がワガママを叶えてくれって言った時。
本当は、禁忌に手を染めるほど・・・君が欲しいと思ったよ。
なのに、それが出来なかったのは理性でも何でもない。
俺の・・・弱さだ。
だから、いつかまた巡り会えた時は・・・覚悟してね?
今度こそ、余すことなく・・・梓を抱くよ。
何度果てても、何度でも抱くから。
その時は・・・2人で一緒に、同じ幸せを歩こう。
その為に今は、ゆっくり休んでいて?
『桜太にぃも慧太にぃも・・・ふたりして、何してるの?』
背後の声に振り返ると、軽く目を擦る紡がいた。
慧「お子様はネンネの時間だろ」
からかう様に慧太が言う。
『私もう、子供じゃないもん』
慧「どうだか?」
・・・子供じゃない、か。
紡の言葉に、思わず口元が緩む。