第1章 〖 恋よりも、愛よりも 〗人気投票1位記念 城戸 桜太
目頭を指先でなぞり、飽きることなく星を眺める。
「あ・・・」
目を向けた先に、光が流れていく。
・・・やるじゃん、梓。
約束、だったよな。
フッと笑いながら、グラスをまた傾ける。
『だーかーらー!もうヒゲの話はいらないってば!!』
慧「紡が先にヒゲヒゲ言ったんだろうが!」
『もういいって言ってるじゃん!しつこいと女の人に逃げられるよ!』
慧「なにィ!逃げられるなにも、美女がオレサマを放っておくわけねぇんだよ~!ほら、捕まえた!」
『嫌だ!ホント無理!離してってば!・・・桜太にぃ助けて!』
・・・ホントにあの2人は。
俺を感傷に浸らせる時間は、くれないわけね・・・
残りを一気に飲み干し、グラスを持ってリビングの入口を開ける。
「慧太、紡、2人ともいい加減にしろよ。何時だと思ってるんだ・・・」
『だって慧太にぃが!』
慧「またオレかよ!」
「ふたりとも!」
『はーい・・・』
慧「へいへい・・・」
ソファーに小さく体を丸めて座る紡と、何事もなかったかのように座る慧太を見比べ笑ってしまう。
慧「なぁに1人で笑ってんだよ?」
「別に?これが我が家の日常なんだなってさ?」
慧「はぁ?」
「分からないなら、それでもいいんだよ」
ドアガラスを閉める手を止めて、そっと振り返って笑って見せる。
「梓、これが我が家の日常だよ」
城戸家は今日も、これからも騒がしく歩き続けるから。
笑って・・・見守っててくれよ?
そう心で呟き、静かにカーテンを閉じた。
~ 桜太番外編 END ~