第13章 オレの道標··· ( 東峰 旭 )
どことなくソワソワする影山に言われ、二人揃って体育館前に向かう。
『あ!来た!早く行きましょ!』
元気よく手招きをされ、足を早めて合流して、今度は3人で歩き出す。
さっき疑問に思ったことを聞いてみれば、家でどら焼きを作って持って来たから大丈夫だと言われ、二人は心配しなくて平気だと念を押されてしまう。
こういう気遣いも、さすが女の子···なのかな。
目的の家は意外と近く、あっという間に到着してしまった。
『なんかドキドキして来た···』
影「アホか」
「まぁまぁ、ずっと楽しみにしてたんだから」
3人並んでインターフォンを押せば、とても優しそうなおばあさんが出迎えてくれた。
中に通されると、テーブルの上には所狭しと料理が並べられていて、おばあさんもきっと心待ちにしていたんだと言うことが分かる。
食事を頂きながら、いろんな事を話す。
オレ達がみんなバレー部だと言うこと。
オレは年上で、学年も違うと言うこと。
そして、おばあさんは数年前から一人で生活をしていると言うことも聞いた。
せっかくのご縁だからと、城戸さんがオレ達を誘い仏壇に手を合わせた。
その傍らには、座布団の上で丸まっている小さな小さな子猫がいて。
オレ達の姿を見つけると、興味津々といった感じで近寄ってきた。
『···可愛い』
抱き上げて頬をすり寄せる姿は、きっとスガが見たら大騒ぎするんだろなぁ、と笑ってしまう。
『2匹とも、優しいおばあさんに助けてもらえて良かったね』
城戸さんが話しかけると、ゴロゴロと喉を鳴らして子猫が擦り寄った。
影「城戸、オレも」
『うん。そうっと抱っこしてね?はい、東峰先輩も』
1匹ずつそっと渡され、子猫なんて初めて抱くよと言いながら受け取る。
ミィミィと鳴きながら腕の中で細かく震えるのを感じて、こんな小さな猫が雨の中で寄り添って震えていたと想像すると胸が痛くなった。
『おばあさん、名前ってどんなの付けてあげたんですか?』
ー いろいろ考えたんだけどね、いい名前を思いついたから名付けたよ。コッチは男の子だから···アサヒくん。もう1匹は女の子だから、ヒカリちゃん。どうだい?カワイイだろう? ー
『アサヒ、君』
城戸さんがチラリとオレを見てから、名前の由来は?なんて聞けば···