第13章 オレの道標··· ( 東峰 旭 )
てっきり、連絡先を書いていた相手に会いたいって言ったのかと···
『それで雨が上がったらお伺いすることになったんです』
「そうか、それは楽しみだね」
城戸さんが子猫を抱いて微笑む姿を目に浮かばせ、顔が緩む。
『···一緒に行きませんか?』
「オレも?今朝、子猫を見つけた時に一緒にいたのは影山じゃなかった?」
オレはただ、傘を傾けて送る途中で話を聞いただけなのに?
でも···子猫って可愛いしなぁ。
『もちろん、影山もです。おばあさんが是非って』
「おばあさんにまで誘われているなら、断る理由なんてないな。いいよ、オレも一緒に子猫に会いに行くよ」
『ありがとうございます!影山に連絡してみます!』
大地達が聞いたら、どんな顔をするだろうか。
笑うだろうか。
それとも···
いや、笑うだろうな。
うん···絶対笑う。
制服が乾くまでの間、子猫に会いに行くときの話をして、ひとときを過ごした。
雨が上がったら···
窓の向こうで、まだ降り続ける雨を見てオレもその日が楽しみだと笑った。
そして、意外と早くその日が訪れる。
澤「じゃあ今日はここまで!各自ストレッチをしっかりやってから片付けな!」
「「 ッス!! 」」
あの雨の日から数日後の、週末。
今日は学校側の都合で午前中しか体育館が使えないとかで、練習は午前で終わりになった。
影「東峰さん、今日ですよね」
モップ掛けをしながら、影山が小さく話しかけてくる。
「あぁ。城戸さんが楽しみにしてたからね」
ちょこちょこと片付けに走り回る姿を見て、彼女も子猫の様だと密かに思いながら答える。
影「アイツ、どんだけ楽しみなのかってくらい朝からソワソワしてて。飯とかも用意されてるらしいッス」
「···みたいだね。いつも元気なのは知ってるけど、今日は一段と、だったから」
そう言ってオレ達は顔を見合わせて笑った。
菅「旭~!この後って旭はどうせ暇だろ?」
「どうせ暇だろ?って、スガ···」
なぜ、オレが暇だと思うんだよ。
菅「帰りがけにさ、大地と一緒に駅前のファミレス行くべ!」
「ファミレス?」
菅「そ!なんだったら影山も来いよ!紡ちゃんも誘ってさ!」
影「城戸を?」
「城戸さんを?」