第13章 オレの道標··· ( 東峰 旭 )
「オレにも分からないけど···でも、城戸さんがまたここを通るって思ってメモを残したんだろうから、電話···してみたらどうかな?」
『そうですね···』
「あ、もし電話番号知られたくないとか、知られたら怖いとか思ってるならオレの使ってもいいよ?」
なんとなく電話をかけるのを躊躇っているように見えて、それなら、と、オレのスマホを差し出した。
『いえ、それは大丈夫です。自分ので···あ···充電切れかけてる···』
ポケットから出したスマホを見れば、確かに赤いランプが点滅していて、それがもうすぐ電源が落ちるという事を示していた。
『あの、家から電話してみます···それで、送って頂いた迷惑ついでに、ですけど···』
「送っていくのは迷惑だとか思ってないよ。オレが勝手にそうしてるだけだから。で、ついでに、の方は?」
傘を持ち直し、立ち上がりながら聞いてみる。
『電話···する時、一緒にいて貰えませんか?』
「え?」
予想外の言葉に、一瞬瞬きを忘れた。
『何となく、ひとりで電話するのが心細いというか···ダメだったら、あの···』
「いいよ、一緒にいるから」
自分の言葉に、自分でも驚いた。
でもそれは、ごく自然に出てきた言葉で···ほっとけないって言うのもあったから。
『どうぞ?』
「お、邪魔しま、す」
城戸さんの家に着いて、中に案内される。
今更ではあるけど、女の子の家に···なんて、初めてだから、ちょっと緊張するな···
『いま誰もいないので、閑散としてますけど···』
「あ、そ、そうなんだ···ハハッ···」
誰もいないなんて、更に緊張するじゃないか···
いや、誰かいてもいなくても、緊張は変わらないけど。
リビングに通され、ちょっと待ってて欲しいと言われて何となく立ちすくむ。
自分の家とは違う香りに、心拍数が上がって行く。
大地の家やスガの家は何度も行ったことあるけど、そことはまた違う、甘い花々しい香りがする···気がする。
『お待たせしました!』
「はいぃっ!!」
『···東峰先輩?』
別に不埒な事を考えていた訳じゃないのに、急に現れた城戸さんに驚いてしまった。
『兄の物ですけど、制服が乾くまでこれを着ていて下さい。承諾は貰ってますから』