第13章 オレの道標··· ( 東峰 旭 )
『それじゃダメなんですよ、女の子って。いつも一緒に居たくて、いつも1番に想われたい···もちろん、大丈夫って人もいるでしょうけど私にはムリ、だったから···』
···だった?
何となく引っかかるワードがあったけど、聞け···ないよな?
『とにかく、影山と私は何でもないです。中学が同じで、今はクラスが同じで、あと家もたまたま近くて、ただそれだけです』
「そっか···」
それから暫くは、ごく普通にバレーの事や、マネージャーの仕事がどうだとか、授業の事とか···
そんなたわいもない話をしながら歩いていた。
「そう言えばさ?今日も朝から雨は降っていたのに、どうして傘が?」
ちょうど大きな公園に差し掛かったあたりで、ずっと疑問に思ってた事を聞いてみる。
『それは···家を出る時は、もちろん傘はありました。けど···あっ···』
言いかけて、城戸さんが小さく声を上げる。
「···どうかした?」
城戸さんが目線を送る方向にオレも目をやると、公園入口に小さな段ボール箱が置かれていた。
「あの段ボールが、気になるの?」
ごく普通の、どこにでもあるような段ボール箱。
城戸さんは、その段ボール箱から目が離せないでいた。
『この段ボール箱、今朝···影山とここを通った時からあるんです』
「そう、なんだ」
『前を通り過ぎようと思ったら、鳴き声が聞こえて。それで影山と開けてみたら、小さな仔猫が2匹···寄り添う様に震えていて。学校もあったし、どうしようもなくて、とりあえず私の傘を置いて行ったんです』
猫···?
まさか、こんな雨の日に捨てられたのか?!
「···開けてみよう」
城戸さんと一緒に、雨に濡れる事も忘れて箱を開けた。
「いない···?」
その中には城戸さんの言う仔猫の姿はなく、代わりにビニール袋に入れられたメモ書きのような物が置かれていて、オレはそれを手に取り目を通した。
「これ、もしかして城戸さん宛にじゃないかな」
『私に?』
メモ書きには、仔猫を連れて帰った事と、城戸さんが傘を置いていく所を見かけた事。
それから、大事な話があるから···もし出来たら連絡して欲しいという事が書かれていた。
『大事な話、って。何でしょうか···』