第13章 オレの道標··· ( 東峰 旭 )
『誰にも見られてないと思ったのに···恥ずかしい···』
ポツリと零しながら城戸さんは両手で顔を隠した。
「それでさ、小さいながらも雨よけの壁や屋根があるのはここまでだよね?一応···聞くけど、城戸さん傘は?」
答なんて分かってるけど、会話が途切れてしまうのが何となくイヤだったから。
『ない、ですけど···』
「よかった」
『え?』
「送って行くよ。多少は濡れてしまうかもだけど、それでもビショ濡れよりはマシだろ?」
これがもし西谷辺りだったら、送って行くから着いて来い!位に···カッコよく決めるんだろうけど。
いや、これがオレだ。
どう頑張っても西谷みたいにはなれないし、影山みたいに対等にもなれない。
オレは、オレらしく···だな。
「行こっか?」
『あ、でも東峰先輩って確か···』
「そんなの気にしないでいいよ。どしゃ降りになる前に送ってく」
多分いま、オレの家が反対方向だからって言おうとしたんだと思う。
それを最後まで言わせなかったのは、オレの···小さな意地だ。
ひとつの傘に、ふたりで入る。
部活の前にスガと傘に入ってるのを見て思ったけど、やっぱり身長差あり過ぎるな。
普通に傘をさしていたら、この子が雨に濡れてしまう。
オレは気付かれないように、少しずつ、少しずつ、傘を城戸さんの方へと傾けた。
『送って貰うとか、ほんとによかったんですか?』
「ダメだったら、最初から声かけないよ。それに、いつもの影山の立ち位置って、こんな感じなんだなとか経験できたしね」
『影山の?ですか?』
「うん、そう。城戸さんと影山って、いつも一緒にいるからさ。大地に聞くまでは、二人は付き合ってるんだと思ってたからね」
オレがそう言うと、城戸さんは笑いだした。
『私と影山がですか?ナイナイ!絶対ありえないですよ!皆無です!』
「そこまで言わなくても」
釣られてオレも笑いが出てしまう。
『だって影山ですよ?王様だし、意地悪だし、こーんな顔して怒るし、バレーのことばっか考えてるし。きっと影山の彼女になる人は寂しいって思っちゃいますよ···』
「そうかなぁ?影山はバレーから離れている時は大事にしてくれそうなイメージだけど?」
『でも、バレーから離れている時は、ですよね?』