第13章 オレの道標··· ( 東峰 旭 )
澤 ー 友達以上恋人未満、ってヤツなんだろ ー
友達以上恋人未満···ねぇ。
影山がそれだったら、他のヤツらは?
同じ部の、同級生···とか?
西谷達も、同じ部の···仲の良い先輩?
大地は?
スガは?
じゃあ···オレは?
オレはどんな立ち位置にいるんだろう。
西「旭さん!何そんなこの世の終わりみたいな顔してんスか?」
「西谷···この世の終わりみたいな顔って···」
どんな顔だよ···
「ちょっと疲れたのかもな」
何となくその場しのぎに言って曖昧な笑顔を見せると、西谷はジジイみたいだ!と豪快に笑ってコートへと戻って行った。
それからまた練習が始まり、ちょっと疲れたのかもなって言った時よりも遥かに疲れを溜めて練習が終わった。
大地やスガを含めた自主練組が残るのを見ながら、オレは部室へ戻り帰り支度を始めていた。
本来なら、長い日々をバレーから離れていたオレこそ自主練と称して居残らなければならないとは思う。
けど、何となく今日は気乗りがしない。
それというのも、ずっと降り続けている···雨のせいなのかとも思えてくる。
そういう時は、ムリに練習をしたらケガをしそうだから···
そう言い聞かせながら着替えを終え、帰り支度を整えた。
「お疲れ」
まだ部室でのんびりとしているメンバーにひと声掛けて外に出る。
ボールの音が鳴り響く体育館の前を歩いていると、少し先の方で小さな人影が跳ねているのが見えた。
あれは···城戸さんか?
いったい何をしているんだ?
水たまりを避けて飛んでみたり、そうかと思えば校舎の壁伝いに歩いたり。
まるで忍者のように雨を避けて歩いているような···
そこまで考えて、はた、と気付く。
影山は、自主練組で体育館に残っていたな。
って事は。
傘···ないんじゃないのか?
ひとつの回答に行きつき足を早めた。
『ここで雨宿り作戦終了かぁ···』
あの忍者歩きにはそんな作戦名まであったのか?!と思わず吹き出してしまった。
『東峰···先輩?』
振り返った城戸さんが、オレの姿を見て目を丸くする。
「お疲れ。部室から出て歩いてたら城戸さんの姿が見えてさ?何してるんだろうって思ってたんだけど···」
言いながら忍者の様に歩く姿を思い浮かべ、また笑ってしまう。