第13章 オレの道標··· ( 東峰 旭 )
西「なんだ、そんな簡単な事が出来なくてスガさんは打ちのめされてんスか?」
そんな簡単なことって、西谷···
澤「それは一般的には難しいんだよ、西谷。サラっと何も下心なく出来るのは、お前や日向くらいだろうな」
西「そうっスか?別に紡は誰かの彼女でもないし、気兼ねしなくて平気っすよ?アイツもいいヤツだし」
澤「それは知ってるよ。だけど、スガが踏みきれないのは···下心アリアリだからだろ」
菅「ないからっ!」
いや、あるだろ。
···と、きっと何も言わずに黙って着替えてる他の連中も思ってるに違いない。
澤「とにかく、いつまでも拗ねてると時間もなくなるから、早く来いよスガ?」
そう言って大地は部員を連れて部室から出ていった。
「スガ、オレも先に行ってるぞ?」
声をかけながらドアを開けると、そこにはちょうどドアを開けようと手を伸ばしていた城戸さんが立っていた。
『わっ、ビックリした···』
「おっと···ゴメンね、オレが急に開けたから」
いえ、大丈夫ですと言って城戸さんは笑った。
「部室に用事?」
『あ、そうでした!ドリンクの粉末が足りないから取りに来ました』
「そんな事?それだったらオレとか、誰かとかに電話とかしてくれたら持っていくのに」
よく見れば髪や肩が雨に濡れているし。
そう言えば、傘···ないんだったよな?
『それこそ、そんな雑用を先輩方にお願いするなんて出来ませんよ』
「そっか、じゃ待ってるから一緒に体育館行こうか。傘、ないんだろ?」
『まぁ、はい···すみません、お願いします』
菅「オレも行く!紡ちゃん、オレと一緒に傘入ろう!旭、先に行ってていいよ?」
あはは、スガが急に元気になった。
「わかったよ、先に行ってる。城戸さん、何かあったら大声出すんだよ?そしたらきっと、大地が血相変えて走って来るから」
そんな場面を想像して、笑いが込み上げてくる。
『大地さんが?ですか?···東峰先輩じゃなく?』
「え?だってオレじゃ、多分オロオロしてスガを止めきれないかもだし···それに大地なら主将だし?」
『じゃあ···間に合わなかったら、大人しく襲われることにします···』
えっ?!待って?!
「それじゃ、オレが見捨てるみたいな···」