第13章 オレの道標··· ( 東峰 旭 )
澤「こんな道のど真ん中でアレだけ叫べば、聞こえない方がおかしいだろ」
菅「ハハッ、ですよねぇ···って、あれ?紡ちゃん傘は?」
スガに言われて見れば、確かに傘を持っていない。
その代わりに影山の傘に一緒に入って···いわゆる、相合傘?
影「あ、コイツの傘は、」
『影山!』
ん?なんかワケありなのか?
『私の傘は、その、ちょっと。ま、いいじゃないですか、影山に一緒に入れて貰ってるし。なので、先に体育館行ってまーす!』
影「あ、おい!引っ張んな!濡れるだろ!」
『じゃあ濡れない様にくっ付く!』
影「くっ付くな!歩きづれぇ!」
小さな言い合いをしながらも、影山が雨に打たれないように傘を傾けながら歩いて行ってしまった。
澤「何だかんだ文句言い合いながらも、あの二人は仲いいなぁ。同中出身で、お互いバレー部だったってのもあるんだろうけど」
「あぁ、そう言えばそうだったな。でも、あんなに仲良くしてるのに付き合ってないって聞いたけど?」
傍から見れば、あんな姿···彼氏彼女だって言われてもおかしくはないのに。
澤「友達以上恋人未満、ってヤツなんだろ。スガもモタモタしてると、そのうちサラっと城戸さん誰かに持ってかれるぞ?」
菅「誰かにって···影山にか?」
澤「それもあるけど、うちの部内だけでもライバルは多いんじゃないか?」
ライバル?
澤「影山もそうだし、山口とかはあからさまに見てて分かるよな。あと、月島とか?ポチとか言って構ってるけど、あの月島が城戸さんと話してる時に柔らかい表情をする時があるし。それに···縁下だって油断出来ないぞ?」
ええっ?!
そんなに?!
菅「うちの部にはオオカミだらけ···」
いや、お前が言うのかソレ!
澤「それに旭だって、だろ?」
「あぁ、そうだな···って、オレ?!なんで?!」
突如自分の名前が上げられて驚きの声を出す。
澤「何で?!って。そりゃあ、旭も城戸さんに心打たれたメンバーのひとり、だからだよ」
「心打たれたって···」
実際は心打たれたってよりも、打ち抜かれたくらいの勢いだったんだけどね。
でも、それは秘密にしとこう。
言ったらきっと、7代先までからかいのネタにされそうだからな。
菅「···旭もか」
スガ、ジトッとした目で見るなよ。