第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
「城戸さん···なんかゴメンね。カメラ付いてるとかオレ知らなくて」
ぽそりと小さく言うと、城戸さんは小さく首を振った。
『そんなの全然気にしてないから。むしろ、大感謝してる。それに、あの時の山口君···カッコよかったよ?』
カッコよかった···?
か、カッコよかった?!
体中の熱が、一気に上昇して行く。
ヤバい、オレ···いま死んでも心残りないかも。
それくらい、嬉しい!!
ー あの、お客様? ー
スタッフの一人に声をかけられ、振り返る。
ー 本日は大変ご迷惑をおかけ致しました。お詫び···と、言うわけではごさいませんがコチラをお受け取りください ー
そう言われて手渡されたのは···
『あ···』
「···カップル限定チケット」
ー 是非、また当園にお越しください ー
丁寧にお辞儀をして、スタッフは別のお客さんの所へと行ってしまった。
カップル限定チケット···貰っても···なぁ。
今日の最後にこんな怖い思いなんてさせたから、誘い辛いよ···
「ねぇ、山口君?」
ツン···とオレの袖を引き、城戸さんが顔を覗く。
『あの、さ?山口君が嫌じゃなかったら···また、連れ来てくれたら、いいな?···なんて』
う、うそっ?!
『···ダメ···かな?』
「ダメじゃないよ!また一緒に来よう!」
オレの言葉に、城戸さんが嬉しそうに笑う。
夏「あ~あ、お兄ちゃんフラれちゃったね?」
日「夏!いちいちうるさいぞ!」
母「翔陽!やめなさい!···まったく、すぐケンカするんだから」
日向家のやり取りを、オレ達は二人で眺めていた。
兄弟とかいたら、こんな感じの日常なんだろうな。
オレ、そういうのいないから日向がちょっと羨ましい。
日「山口と城戸さん、途中まで電車一緒だろ?だったらまとまってみんなで帰ろう!」
「えっ?!みんなで?!」
日「そう。みんなで」
夏「やったぁ!紡お姉ちゃんと一緒!!」
『いいよ、一緒に帰ろう』
···オレは、もう少し城戸さんとふたりでいたかったんだけど、な。
ま、いっか!
「日向、みんなで帰ろう!」
ぞろぞろと連れ立って駅まで歩き、同じ電車に乗り込む。
日向の妹ははしゃぎ疲れて寝てしまって、日向が面倒見ていた。