第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
今更ながらに、なんだかドキドキして来て。
指先が、ちょっとだけ震えてくる。
そんなオレのドキドキも関係なく、動き出したゴンドラは、ゆっくり、ゆっくりと地上へと近付いていく。
···あれ?そう言えばさっき日向が。
そのまま城戸さんを離すなよ!って、言ってなかったっけ?
オレ、日向にこの状況の事···話したっけ?
少し前の会話を思い出しても、ドキドキが邪魔してうまく思い出せない。
なんで知ってるんだ?
何度も考えているうちに、降車場所のスタッフが見えて来た。
「城戸さん、もう大丈夫だよ。下まで着いたから」
ブランケットを外し声をかける。
『ホント···貴重な経験したね。でも、山口君が一緒にいてくれてよかった···』
そのひと言が嬉しくて、思わずもう1度ギュッと抱きしめた。
ー 大変ご迷惑をおかけ致しました。足元に気を付けて降りて下さい ー
外鍵を解除して、スタッフが扉を開けてくれる。
「さ、降りようか?」
そう言って、しっかりと城戸さんと手を繋いで二人で降りた。
日「山口!城戸さん!」
日向···
夏「紡お姉ちゃん!」
オレ達の姿を見て、小さな影と、それより更に小さな影が駆け寄って来る。
「待っててくれたんだ?」
日「当たり前だろ!心配したんだからな!」
「アハハ···それはゴメン」
夏「紡お姉ちゃん、怖かった?」
『うん···すっごい怖かったけど、山口君が一緒にいたから大丈夫だった』
夏「そっか!こっちのお兄ちゃんとラブラブだったもんね!」
『ラブラブ···?』
「ラブラブ···?!」
城戸さんと顔を見合わせて、同時に首を傾げた。
日「山口···もしかして知らないの?観覧車の中ってさ、防犯とかの為に···カメラ、ついてるぞ?」
か、カメラ?!
じゃ、じゃあ?!
日向がさっき言ってたのって、防犯カメラを見てたから?!
「み、見た?」
聞かずとも答えは分かっていても、つい、聞いてしまう。
日「もう、バッチリ!」
···見られてたのか。
オレ、カメラとかそんなの知らないから···あんな事を···
っていうか叔母さん!!
そんなの付いてるのに頂上でキスだ!とか言わないでよ!!
···してはないけど!!