第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
「まだ止まったままだし、オレ達1番テッペンにいるから揺れるし、ちょっと寒いけど···とりあえず動き出すの待ってるんだよね」
日 ー城戸さんは?!泣いたりしてない?!確か前に高い所怖いって言ってた気がするから! ー
その言葉に、ドクンと胸が鳴った。
日向は···知ってたんだ···
日 ーねぇ!山口聞いてる?! ー
「聞こえてるよ。城戸さんは、まぁ、ちょっと怖いみたいだけど···」
日向と話しながら、そっと城戸さんの顔を見る。
その瞳はまだ少し、不安な色で染まっていた。
「オ、オレがいるから大丈夫だよ!」
スマホを持つ手とは逆の手で、城戸さんを更に抱き寄せながら日向に言った。
日 ーホントか?!山口だって結構ビビりだろ?!···あ、ちょっと待ってて!スタッフ見つけた! ー
「あ、おい!日向?!」
山口も結構ビビりだろ、って。
軽く失礼だな、日向は。
···確かにビビるけど!こんな状況でオレがビビってる場合じゃないだろ。
城戸さんを、守ってあげたいって決めたんだから。
通話の向こうで、日向がスタッフと話すのが聞こえてくる。
日向も一生懸命にいろいろ聞いてて、スタッフもそれに答える。
ありがとう、日向。
さっき、軽く失礼だなって思った事···取り消すよ。
日 ー山口!聞こえる?! ー
「声デカイよ日向。ちゃんと聞こえてるから」
日 ーもうすぐ動くって!あとちょっとだけ待っててって!だから城戸さんにもそれ伝え···あ··· ー
日向?
それまで元気あり過ぎるくらいに話してた日向が、急に黙り込んだ。
「も、もしもし?日向?!どうかしたの?!」
日 ーあ~、えっと···だな。うん、まぁ、その、ご···ごゆっくり? ー
「は?ごゆっくりって?」
こんな状況でごゆっくりって、なに?!
どういうこと?
日 ー山口!今から動くって!だからそのまま城戸さん離すなよ! ー
「え?あ、うん、わかった!」
日向が言う通り、スタッフからの放送が流れ観覧車がゆっくりと動き出した。
「やっと動いたね···でも、安心して?下につくまでは、ずっと側にいてあげるから」
『うん···ありがとう山口君』
ブランケット越しに、城戸さんの温かさが伝わって来る。