第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
別にオレは、高い所が怖い訳じゃない。
ただ、この状況···本当に待ってれば動き出すんだろうか、とか思っちゃうよ。
だけど、コレばっかりはどうにもならないし。
目の前には怖さで小刻みに震える、城戸さん···
オレに出来る精一杯は、もう使っちゃったし。
どうしよう、どうしたら···あ。
あ···、いや···、だけど···。
うぅぅぅっ···!!
迷ってる場合じゃない!
揺らつく足元を気を付けながら、落ちたブランケットを拾い城戸さんの隣に座る。
『山口君?!ゆ、揺れ···』
オレが移動したせいで、一瞬ゴンドラがグラリと揺れた事に城戸さんが慌て出した。
「大丈夫だから」
ブランケットを大きく広げ、城戸さんを包んで···ギュッと抱き締める。
「大丈夫。オレが一緒にいるから、絶対大丈夫だよ」
影山みたいに、悪態つきながらもカッコよく守るとか出来ないけど。
澤村さんみたいに、ドーンと安心できるような包容力はないけど。
ツッキーみたいに、ツンツンしながらもスマートな対応は出来ないけど。
オレにも、これくらいなら出来る···
必要なのは、ほんのちっぽけな勇気。
『山口君?』
包んだブランケットの隙間から、城戸さんが顔を出した。
「動き出すまで、ずっとこうしててあげるから。そしたらさ、怖くないデショ?って、あれ?なんかツッキーみたいに言っちゃった!」
それは、ほんの偶然。
笑わせようとか、思ってなかったのに。
城戸さんはクスクスと笑い出した。
『月島君、今頃クシャミしてるかもね?』
「だね!」
見つめ合ったまま、お互いに微笑み合う。
なんだろう···何か、いま。
凄くハッピーな気分!
口に出しては、言えない状況だけどね。
ほっとした所に、オレのスマホが鳴り出す。
···んん~!こんな時に誰だよ!
ゴソゴソとポケットからスマホを取り出せば、着信相手は···
「日向?···もしもし?」
日 ーあ!出た!山口いまどこにいる?! ー
出た!って、そんな、人を幽霊か何かみたいに···
「いま?観覧車の中に、」
日 ーやっぱりそうか!!大丈夫?!オレさっき山口達が観覧車の列に並んでるの見たから、もしかしてって思って! ー
なるほど、それで心配して···