第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
ー さぁ、どうぞお乗り下さい ー
ゆっくりと降りて来る観覧車の扉を開け、スタッフがオレ達を促した。
そうっと、怖々と足を出す城戸の背中に手を添えて支えてあげる。
一瞬ピクリとしたけど、すぐに笑顔を見せながらありがとうと言ってくれた。
でも、やっぱり···その笑顔は普段より固くて。
オレって、そんなに信用ないのかな?とか、ちょっとヘコんでしまう。
ー 空の旅へ、行ってらっしゃい! ー
スタッフが声をかけながら外からガチャリと鍵を閉めた。
向かい合って座りながら、ゆっくりと上昇して行くゴンドラに無言のまま背中を預ける。
···何か、気まずいよ。
でも、なんて話しかけよう···
チラリと城戸さんを見てみれば、何か顔色が悪いし。
···え?顔色が悪い?!
「城戸さん、大丈夫?!もしかして具合悪かったの?!」
ビックリして声をかければ、城戸さんは力ない笑顔を見せた。
『ご···ゴメンね山口君。覚悟を決めたつもりだったけど···やっぱり、怖い···』
「怖いって···あの、えっと···オレ?」
『違う···高いところ』
「高い···うそ、でしょ?」
小さく呟くと城戸さんは小刻みに首を横に振った。
「だ、だって!絶叫系は平気だったのに?!」
あんなに何回も乗っちゃうくらい!
なのに観覧車がダメとか···
『絶叫系は···スピード重視だから』
そういうこと?!
観覧車が高くなって行くに連れて、城戸さんの言葉数も減って行き···青ざめて行く。
こういう時、どうしたらいいんだろう。
ツッキーだったら、どうするかな?!
影山だったら···澤村さんだったら?!
チラッと頭の隅に、検索、の文字が浮かぶ。
そうだ、検索してみれば···
それはダメだ!
城戸さんが目の前にいるのにそれは出来ない!
あぁ···カッコイイって難しいよ!!
やっぱり、オレ···ヘタレから卒業出来ないのかな···
なんて落ち込んでる場合じゃない!
だけど、どうしたら···
思考回路がパンクしそうな状態で、もう1度城戸さんの様子を見る。
···!!
そうだ!
ゴンドラが揺れないように、そっと城戸さんの方へと移動する。