第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
少し離れた場所に、いかにも必死に誰かを探す二人がいて。
さとし君の呼びかけに気付き慌てて駆け寄って来た。
「ね?泣くのやめて頑張ったら、見つかったでしょ?」
ゆっくりと肩車から下ろし、ポンっと頭を撫でてやる。
ー さとし!探したんだからね! ー
ー すみません、息子がお世話になって ー
代わる代わる、さとし君の両親がオレ達に頭を下げる。
「えっと、オレ達は別に···ね?」
モゴモゴと言いながら城戸さんに促すと、オレの言葉に微笑みながら頷いた。
ー あら?そのカチューシャ··· ー
さとし君のママさんが、オレ達が持っていた猫耳カチューシャに気付いて微笑んだ。
ー ごめんなさいね、デート中だったんでしょ? ー
『デート···?』
「あっ!いや、そのっ、ち、違っ···」
デートと言われて黙り込む城戸さんを見て、慌ててしまう。
『そっか!デートになるんだ?!』
えぇっ?!
『今日初めて二人で出掛けるから、一応···そうなるよね?』
ー あら···じゃあ初デートなのに迷子の相手なんてなおのこと申しわけないわね···ホントにごめんなさいね? ー
「あ、いえ···大丈夫です···」
オ、オレの心拍数は全然大丈夫じゃないけどねっ!
ー ただしはおねえちゃんとラブラブデートなの? ー
「ななな何言ってんだよ?!」
ー コラさとし!···ホントに重ね重ねごめんなさいね··· ほら行くよ、さとし。それじゃ、楽しいデートを ー
ちょ、ちょっと?!
楽しいデートを、って···そんな、良いお年をみたいな言い方で締めの言葉にしないでよ!
そんなオレの心の声も虚しく、パパさんとママさんは、さとし君を真ん中にして手を繋ぎ行ってしまった。
···オレ達に微妙な空気を残して。
『あの···さ?山口君』
山口君、か。
さっきは1回だけ、名前で呼んでくれたんだけどな。
···なんて、山口君って呼ばれるのが当たり前なんだけどさ。
「オレ達も行こっか?」
『ですね?』
何となくお互いに照れ隠しをしながら、空いてる所をチェックしながら遊園地を回った。
カップル限定チケットの猫耳のお陰で、行く先々にはそれぞれ変わった難関が待ち受けていて···