第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
ー ママ、と···パパ··· ー
完璧迷子じゃん···
『山口君、凄い···』
「じゃあ、オレ達が一緒にさとし君のママとパパを探してあげるから、もう泣くのは終わりにしよっか?男の子が泣いてたら、カッコ悪いぞ?」
···オレ、人のこと言えない気もするけど。
ー うん··· ー
『はい、これで涙拭こうか?ね?さとし君』
城戸さんがカバンからハンカチを出して、男の子の涙をそっと押さえた。
ー ぼく、ママが走ったらダメって、言ったのに。楽しくて走ってたら、ママとパパが··· ー
「そっかぁ。それはママの言うこと聞かなかったさとし君が悪いんだよ?でも大丈夫!ちゃんとママとパパが見つかるまで一緒にいてあげるからね?」
ー うん··· ー
さて、どうするかな。
名前も誰と来たのかも分かったし、迷子センターに連れて行くのは簡単だけど···あそこはあそこで、心細くなるんだよね···オレの経験上。
よし、決めた!
「さとし君、ママとパパは高いところから見たらすぐ分かるかな?」
ー ママはかわいくて、パパはかっこいい ー
それは···抽象的過ぎて分からないよ···
「さとし君、ちょっと立てる?オレが肩車してあげるから、遠くまでよーく見てみて?」
ちょっと、いや···盛大に屈んで、さとし君を肩車してみる。
ー うわぁー、たかい!すごい! ー
「どう?遠くまで見える?」
ー うん!すっごい見えるよ!ただしすごいね! ー
「いきなり呼び捨て?!」
『まぁまぁ、いいじゃない···忠君?』
忠君?!
クスクスと笑いながら、城戸さんがオレの名前を呼んだ。
ヤバい···なんか超嬉しいかも!
こんな時になんだけど、ナイスアシストさとし君!
『さとし君どう?ママとかパパ、見える?』
ー う~ん···わかんない··· ー
『どうする山口君?迷子センターに···』
「それは最後の手段だよ。まだ迷子になったばっかりっぽいから、この場からあんまり動かない方がいいと想うんだよね」
···オレの経験上。
『そうなの?なんか山口君、迷子に詳しい?』
えぇ、まぁ···経験豊富な上級者、ですから。
ー あっ!ママだ! ー
「えっ、どこどこ?!」
ー ただし、あっち!···ママー!!パパー!! ー