第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
ー それでは発車致します!楽しい時間を! ー
「うっ···わぁぁぁぁぁっ!!」
『きゃぁぁぁぁぁぁぁ!』
これをなんと4回くり返すとは、オレは想像もしてなかったよ城戸さん。
連チャンで4回···しかも全部先頭車両とか。
城戸さんが、絶叫マシン好きだとは知らなかったよ。
『あ~楽しかった!ね?』
「う、うん···そだね···」
『次はどれにしよっか?』
まだ絶叫マシン乗るの?!
「ちょ、ちょっと休憩しない?!ほら、叫んでたから喉乾いたしさ?」
オレが言うと、それもそうだねと城戸さんは笑った。
よかった···ちょっと休める。
「じゃあ、オレが買ってくるから城戸さんはそこのベンチで待ってて?」
『あ、でも!』
「いいからいいから、待っててね~!」
急ぎ足で飲み物を買いに行く。
そこでまたオレに難関が訪れた。
なに、買えばいい?
スポドリ系は部活で飲んでるし、お茶···じゃ味気ない?
甘いのにしたら、なんか乗り物酔いしそうだし。
オ、オレンジジュースじゃ子供っぽい?!
どど、どうしよう!ちゃんと聞いてからにすればよかった。
戻って出直すのも、なんかマヌケっぽいし。
迷いに迷って、紅茶とオレンジジュースとお茶の3本を買って城戸さんの待つベンチへと戻った。
そしてまさか、そこにまたも難関が待っているとは···
「お待たせ!···って、どうしたの?」
『あ···山口君···どうしたのって言うか、迷子みたいで』
ベンチに戻ると城戸さんの隣には泣きじゃくる小さな男の子が座っていた。
『名前聞いてもダメで、誰と一緒に来たのか聞いてもダメで···ちょっとお手上げ状態なの』
なるほど···
オレも経験あるもんなぁ、子供のころ。
こういう時って、最初は心細くて···とにかく怖いんだよね。
でも、そう言う時は。
「ねぇ、泣いてても迎えは来ないよ?オレ達が一緒に探してあげるからさ、名前教えて?」
男の子の目線に合うように、地面に膝を付いて頭を撫でる。
「オレは忠って言うんだ。こっちのお姉ちゃんは、紡ちゃんって言うの。キミは?」
ー っく···ぼくは···さとし··· ー
「さとし君かぁ。わかった。じゃあさ?今日は誰と来たのかな?」