第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
遊園地の受付ゲートで、最初の難関がオレ達を待ち受けていた。
叔母さんから貰ったチケットを見せると、ニコリと微笑まれ···
ー カップル限定チケットのお客様には、コチラをお渡ししています ー
そう言って手渡されたのは···
「耳つきカチューシャ?!」
ー はい。コチラをご利用頂くことでカップル限定の様々なサービスがお受け頂けます ー
叔母さん!そんなこと聞いてないよっ?!
『かわいい···』
いや、かわいいけどね!
それは女の子が付けた場合でしょ?!
オレが付けたところで、かわいいとは程遠いでしょ?!
『ね、山口君?猫耳とウサちゃんと···どっちにしようか?』
ご利用頂くのっ?!
···そりゃあ、城戸さんがつけるなら見たいけども!
『どっちもかわいいなぁ···ねぇ、山口君が決めて?』
ご利用頂く事は、決定事項なのね···
「じゃ···猫さんで···」
ー かしこまりました。楽しい1日をお過ごし下さい ー
ウキウキと猫耳をつける城戸さんを横目に、オレも仕方なく同じように付けてみる。
ガラスに映る自分の姿をチラリと見て···どうか知り合いに会いませんように···と、ため息を吐いた。
『山口君、もしかしてコレ嫌だった?』
不安そうにオレを覗き見て城戸さんが言った。
「イヤではないけど···城戸さんから見てどう?オレもかわいいと思える?」
ちょっと屈んで見せれば、満面の笑みでかわいいよ!って···
『それに、今日1日はお揃いだよ?』
「お揃い···」
『うん!お揃いの猫耳ちゃん』
お揃い···そっか!
城戸さんと1日お揃い!
それはラッキーだし、嬉しい!
そう思うだけで、なんかウキウキとしてくる。
男って単純だなぁ···と思う。
あれ?···オレが単純なのか?!
受付で貰ったパンフレットでニヤつく顔を隠しながら、何度も何度もお揃いの猫耳を眺めた。
最初に何に乗る?なんて会話をしながら、ふと、周りを見る。
同じように猫耳やら、ウサちゃんを付けたカップルを何組か見つけては···またもニヤつく。
ただ···そのカップル達が仲睦まじく手を繋いだり、腕を組んだりしてるのを見ると、ちょっとだけ羨ましかったりするオレがいる。