第1章 〖 恋よりも、愛よりも 〗人気投票1位記念 城戸 桜太
「紡の様に歳が離れた弟がいたら・・・の話」
慧「桜太・・・母さんは多分、もう産めねぇぞ?」
ため息混じりに言う慧太に、何言ってんだよと返しながら、わちゃわちゃと始める3人を見続ける。
「それよりもさ。慧太、どうする?」
慧「あ?なにが?」
シューズを脱ぎながら慧太に視線を移す。
「なんか、脈アリ、みたいなんだけど」
俺が言うと、慧太は青春だなぁなんて薄く笑った。
慧「しーかーも、2人ともな。やれやれ、桜太は苦労人だな」
「何で俺だけ?慧太もでしょ?」
慧「良かったじゃねぇか。義弟が出来るぞ?」
「俺が言ったのは、そういう弟じゃないから」
素っ気なく返し、シューズを持って立ち上がる。
「先に戻ってるよ。軽くシャワー浴びてから夕飯の配膳しとくから、慧太は後のこと頼むよ。紡は2階のシャワー使わせて、1階のはあの2人に、ね」
慧「あいよ」
あとを任せて、俺は先に地下コートを出た。
サッとシャワーを浴びて、濡れ髪のままキッチンへ入った頃にリビングの外が騒がしくなり、急いで配膳を終えて、その日もみんなで賑やかに食事をして1日を終えた。
そして、今。
俺は自室でひとり、ベッドに腰掛け梓からの手紙を手にしたまま・・・封を切れずにいる。
読むのが、怖い。
もし・・・
もし梓に約束はなかった事に・・・なんて書いてあったら・・・
自分の事はもう忘れろとか、書いてあったら・・・
俺は・・・
「随分なヘタレだな、俺は」
うなだれて、乾いた笑いが零れる。
風に当たりながら読もう。
そう思い、ベッドから立ち上がりデスクのペーパーナイフで封だけを丁寧に切った。
そっと部屋を出て、リビングに向かう。
慧「どした?寝たんじゃねぇのか?」
まだ起きていた慧太が、俺を見て声を掛けてくる。
「こんな時間に寝るほど、子供じゃないよ」
ちょっとね・・・と言って手紙をヒラヒラさせると、エアメールである事から慧太も察してくれる。
慧「ごゆっくり、な・・・桜太、コレ持ってけ」
そう言って慧太はグラスを出し、自分も飲んでいたブランデーを注ぎレモンを搾って手渡された。
「コレに頼る事がないようにするよ」
ありがとうと言って受け取り、そのままウッドデッキへと出た。