第1章 〖 恋よりも、愛よりも 〗人気投票1位記念 城戸 桜太
俺の存在は梓との日々の会話の中で知っていて、どんな人物なのかどうしても知りたかった為だと。
そして、今回の結末は予想などしていなかったとも書いてあった。
それから最後に。
自分は梓から愛されていなかったかも知れないが、それでも、梓の事は・・・本気で愛していた、と。
別紙には埋葬は日本ですると、梓が眠る場所が記された地図が付けてある物も同封されており、いつか梓に花を手向けてやって欲しいとも書いてあった。
読み終えた手紙を丁寧に封筒に戻す。
梓に愛されていなかったかも知れない・・・
その言葉が、胸を刺す。
あなたはちゃんと、愛されていたと思います。
梓はあなたの子供を産んで、その希望を未来へと繋げる為に、現実を受け入れたのだから。
いつか会う事があったら・・・俺の知らない梓と、俺が知っている梓の事をお互いに伝え合いたいと思う。
ただ、今は。
気持ちの整理がつかない間は・・・その、時期じゃないと思うから。
ひとつ息を吐いて、梓からの手紙に触れる。
何が書いてあるのだろう。
俺はどんな気持ちで、封を開けたらいいのだろう。
『桜太にぃ・・・』
意を決して、封を開けようとするとドアをノックされた。
「どうした?」
ドアを開けると練習の準備を終えた紡がいた。
『先に地下に降りようと思ったら、鍵がなくて・・・』
鍵?
紡に言われ、ポケットの鍵を伸ばす。
「ごめん、俺が持ったままだった。一緒に行こう」
『あ、でも桜太にぃ、何か・・・用事をしていたんじゃ』
「急ぎの用じゃないから、大丈夫だよ。ほら、影山君達も待ってるだろうから、行こう」
紡と一緒に地下へ降り、4人で日向君のレシーブ練習をする。
それほど時間も開けずに慧太も加わり、その日の練習メニューも無事に終えた。
一緒に過ごす時間の中で、弟がいたら・・・こんな感じなんだろうなと笑いが浮かぶ。
慧「なァに、笑ってんだよ」
「別に?俺に弟がいたら、きっとこんな感じなんだろうなってさ?」
慧「おーい、オレの存在消すなよな・・・」
「違うよ。慧太は確かに弟だけど、そうじゃなくてさ」
言いながら3人に目を向ける。