第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
なんて言いながら笑ってるし。
考えてみれば確かにそうだよな。
部活のみんなの中にいれば、周りはみんな巨人だよね。
2人して早く来ちゃったから、予定よりも幾つも早い電車に乗った。
予想通りに電車は満員で・・・城戸さんは埋もれながら電車の揺れに対抗するように必死に頑張ってる。
座る場所どころか捕まるとこもないし、危ないよ・・・
隣の駅に電車が停車して、ドアが開くと雪崩のように出て行く人に押されて城戸さんが流されていく。
「城戸さん捕まって!」
伸ばした腕に城戸さんが捕まるのを確認すると、オレの方から側による。
「ね、これなら流されないし、埋もれないからさ?」
ドアと座席の角っこに城戸さんを立たせ、その目の前にオレが立って壁に手を伸ばした。
これならオレがいる分、スペース出来て安心だ!
『ゴメンね、山口君・・・私がちっちゃいから・・・』
「全然!」
そう答えながら城戸さんを見れば・・・き、距離近ッ!!
ヤバイ・・・何かドキドキして来た・・・
こんなんじゃ現地に着くまで心臓持たないよ!
それに城戸さんに変な人とか思われたら・・・オレ、この先ずっと気まずい。
と、とりあえず、もうちょっとだけ離れた方がいいよね?
そっと壁についてる手を浮かせたその時・・・
「わっ!!」
電車がガタンッと大きく揺れて、伸ばした腕が肘まで壁についた。
「ゴ、ゴメン!」
『あ、だ・・・大丈夫だから』
ヤヤヤ、ヤバイ!!
少し離れようとしたのに、さっきより距離半分になっちゃったよ!
「苦しかったら言って?何とかするから」
『大丈夫、ありがとう山口君』
絶対・・・大丈夫じゃ、ないよね?
両手に・・・恐らく今日の為のお弁当が入ってるだろうカバンを大事に抱えて。
背後は不安定に揺れる電車の壁。
『・・・っとと』
オレはとりあえず何とかなってるけど、これじゃ・・・
「ね、城戸さん。そのカバンは降りるまでオレが持つよ、貸して?」
『え?でも・・・あ』
カバンを受け取り、オレは肩からかける。
「そしたらさ、両手が自由になるじゃん?だから、オレのシャツとかどこでもいいから、捕まってていいよ?その方が楽でしょ?」
『・・・ありがとう』