第12章 カッコイイって、難しい。 ( 山口 忠 )
「ちゃんと育ってて安心!じゃ、早く着替えてね。お腹空いてるでしょ?部活の後なんだから」
叔母さんはそう言って、鼻歌を歌いながら階段を降りて行った。
育ってて安心って、大きなお世話だよ。
っていうか、見られた。
バッチリ見られた・・・
ズーンと暗くなる気持ちで部屋に入り、適当に服を選ぶ。
「忠?まだぁ?遅~い!」
「今行くから!」
早く早くとうるさい叔母さんと一緒に家を出る。
予想通り、しっかりと腕を組まれる。
こんな姿、誰にも見られたくないよ。
パッと見、カレカノみたいじゃん!
叔母さんはお母さんと歳が離れていて見た目も若い。
更に、格好もやたら若い・・・
ちょっと歳上の、とか、思われても仕方ない。
実際は、チョットどころの歳の差じゃないけどね。
・・・ハァ。
「ちょっと何~?大きなため息なんかついて。まだ気にしてんの?」
うるさいよ・・・
「いいじゃん別に。子供の頃はこ~ンなだったのに、いまはこれくら~いになってんだから、成長してんじゃん」
「ちょっと!指でサイズ感表現しないでよ!」
サッと目の前に見せられた指先を払い除ける。
『あれ、山口君?』
こ、この声・・・まさか・・・?!
ギョッとしながら振り返ると、そこには城戸さんがいて。
『やっぱり山口君だった!なんか背格好とか声とか似てるなぁって思ったんだよね!』
「城戸さん?!こ、こんな所で奇遇、だねぇ。あはは・・・」
イチバン見られたくない人に会っちゃったよ・・・
『山口君の私服姿、初めてだけど・・・』
「えっ?!な、なんか変?!」
『あ、そうじゃなくて。ちゃんとカッコイイなぁって!やっぱり背が高い人って何着ても似合うんだなぁ・・・いいなぁ』
か、カッコイイ・・・とか・・・メチャクチャ嬉しい!!!
「城戸さんだって!ちゃんと可愛いじゃん!スカートだって女の子っぽくて可愛いよ!!」
『女の子っぽい・・・って』
あれ・・・オレいま変なこと言った?
「バカ忠」
「アンタ、こんな可愛い女の子に女の子っぽいとかアホねぇ。ゴメンね、アホな忠で」
そんなにアホアホ連発しないでよ。
『いえ・・・えっと?山口君の・・・彼女、さん?』
城戸さんが遠慮がちに言った言葉に、叔母さんが笑い出す。