第1章 〖 恋よりも、愛よりも 〗人気投票1位記念 城戸 桜太
慧「・・・寝るわ」
「おやすみ。明日からは、いつもの日常・・・だからね?」
分かってるって、と、手を振りながら慧太がリビングを出る。
その夜は、軽くシャワーを浴びて俺も部屋に戻った。
翌朝は普通通りに起きて、何も変わらない朝を過ごす。
『あ・・・』
リビングのドアを開けた紡が俺の姿を見つけ、戸惑いを隠せずに立ち尽くした。
「おはよう、紡。今朝も日向君の秘密の朝練、行くんだろ?」
『行く、けど・・・桜太にぃは・・・その・・・』
多分、紡は梓の事をどう切り出していいのか分からないんだろう。
「紡、ちょっとおいで?」
声をかけながら、俺も手を止めて紡に歩み寄り抱きしめる。
『桜太にぃ?』
「よく、聞いて欲しいんだ。梓の事だけど・・・確かに梓はいなくなってしまった。でもね、紡。俺の心の中では、今もちゃんと元気でいるから・・・ね?」
話し終わると紡は、うん・・・と小さく呟いて俺を抱きしめ返す。
「よし、いい子だ。それから、昨日はごめんな。俺も動揺して、どうかしてた。もうあんな事はないようにするから、本当にごめん」
『大丈夫。ちゃんと分かってるから。あのね・・・今日も影山と日向君、一緒に帰ってきてもいい?』
「もちろん!俺は今日休みだから、おやつも作りながら待ってるから」
『やった!』
「朝練に遅れないように、早くご飯食べちゃいな?」
・・・これが、いつもの俺の日常。
何も変わらず、何にも変えられない小さな幸せがある・・・日常。
それから数日、紡が元気いっぱいな友達を連れて帰る日々が続いていた、ある日。
「エアメール?俺宛に?」
帰って来た紡がポストに入っていたからと俺に1通の手紙を持って来た。
差出人は見知らぬ相手からだった。
ペーパーナイフで丁寧に封を切り、中を覗く。
もう1通入ってる?
取り出してみると、同封されたもう1通は・・・梓からの物だった。
・・・どういう事だ?
最初の手紙を開き、目を通す。
それは梓のパートナーからの物で、内容はとても驚く事が書き綴られていた。
まず、俺の事を調べてしまった事。
そして、それに対しての謝罪。