第11章 ハートの秘密 ( 城戸 桜太 )
「・・・と、まぁこんな事があって」
懐かしい思い出話をしながら、足を組みかえる。
慧「へぇ・・・お嫁さんが2人ねぇ・・・」
「そこじゃない!慧太、ちゃんと話聞いてた?」
慧「聞いてるって!んな怒るなよ・・・」
「あ・・・ついでに思い出した・・・慧太、紡のほっぺにちゅーのあとの・・・ペロンて、どういう事?」
今までずっと忘れていたのに、過去の話で沸き立つ小さな怒り。
慧「・・・何のことだか」
そう言う慧太の目は、明らかに泳いでいて。
「慧太!ごまかすな!」
慧「あ~もぅ、うるせぇな桜太は。さっさと食えよ、冷めんだろうが」
「まだ、いい。冷めたら温め直すから」
今はまだ、もう少し・・・ケチャップで塗り潰された大きなハートを眺めていたいんだ。
それに、このマシュマロコーヒーも。
こっちはきっと、温め直したらハートは溶けてしまうだろう。
でも、もう少しだけ・・・
「そうだ!写メ撮っとこう」
慧「女子かっ!」
「・・・羨ましいんだろ、慧太は」
スマホを構えていろんなアングルで写真を撮りながら、フフンと鼻を鳴らして見せる。
慧「言っとくけどな、桜太?オレはお前に譲ってやったんだ!・・・感謝くらいしろや」
「残念でした。譲られなくても、昔から俺は慧太よりワンランク上なんだよ。なんたって、紡がお嫁さんになりたい男ナンバーワンだからね、俺は」
慧「今はどうだかわかんねぇだろ・・・そのうち彼氏とか連れて来るかもだぞ?」
「か、彼氏・・・」
それは・・・困る、気がする。
いや、絶対まだ困る。
慧「案外、オレ達はもう会ってたりしてな?あ、影山だったり?」
「影山君?!」
ガタッと音を立て、それがスマホを落としたという事に気付く。
慧「案外・・・澤村、とか?紡が結構、懐いてるし?」
「影山君に・・・澤村君・・・いや、ダメだ!俺は認たくない!そうじゃなくて、今は誰が来てもダメ、絶対!・・・ヤダ・・・」
慧「お前、心の声がダダ漏れだぞ・・・」
咄嗟に口を押さえ、これ以上の漏れを防ぐ。
だって初めて出来た・・・その・・・か、彼氏とやらを紡がいつ連れて来るのかとハラハラしていたって言うのに。
まぁ・・・結果的には、会えず終いというか。
・・・だったけど。