第11章 ハートの秘密 ( 城戸 桜太 )
いつだったか、びしょ濡れで帰って来て。
大泣きしながら、泣き疲れて眠っていった紡を思い出す。
あの時だって、どんなに相手探しをしてやろうと思った気持ちを押さえ込んだ事か。
でも、傷心の紡に寄り添うことが最優先だと・・・踏み止まって。
だから、彼氏だとか言って連れて来たら・・・
「とりあえず、ぶっ飛ばす・・・」
慧「は?・・・なんだか穏やかじゃねぇな」
「俺を倒してからじゃなきゃ、ダメだ」
慧「何言ってんだ桜太?正義のヒーローはオレの特権だぞ・・・熱でもあるんじゃねぇのか?」
「悪いけど、俺は至って正常だよ」
慧「今日に限っては、どうだかな?」
慧太の言葉に軽く眉を跳ね上げながらも、目の前のハートマークに視線を落とす。
いつか・・・このハートマークを誰かに譲らなきゃいけない日が、来るだろう。
もしかしたら、既にお嫁さんになりたい候補の順位が誰かと入れ変わってしまっているかも知れない。
・・・それは今、あまり考えたくないけど。
「なぁ、慧太。女の子ってさ、彼氏とか結婚相手とかに父親に似た影を探すって・・・いうだろ?烏野にいるかな、俺に似た感じの・・・誰か」
言いながら、烏野バレー部員の顔をゆっくりと思い浮かべる。
慧「お前・・・、いつから紡の父親になったんだ?それに桜太に似た感じのって事はよ、オレにも該当するんだぜ?」
「なっ、例えばの話だよ!」
慧「その割には、大変とっても真剣にお悩みで?」
ニヤリとしながら言う慧太にため息をひとつ吐く。
紡がいつか、誰かを連れて来ても反対はしない。
あ。
ちょっとは・・・するかな?
・・・やっぱり、もうちょっとだけ・・・するかな?
考えるの、やめよう・・・
目の前のハートに心踊らせながら、きっと訪れるいつかに・・・フタをする。
今から心身ともに鍛えて置かないといけないな。
そんな事を秘密裏に思いながら・・・オムライスとマシュマロコーヒーを眺めていた。
もちろん
口元を緩ませながら。
~END~