第1章 〖 恋よりも、愛よりも 〗人気投票1位記念 城戸 桜太
どんな事があっても、大事にする事。何が起きても、守り抜く事・・・
それが、大前提の約束なのにな。
明日からはまた、しっかり約束守るから。
だから、せめて朝までは・・・弱いお兄ちゃんでいさせてくれ・・・紡。
「おやすみ・・・」
もう一度だけ、そっと頭を撫で音を立てないように紡の部屋を出た。
「まだ起きてたのか」
リビングに戻るとキッチンで慧太がのんびりと寛いでいて、傍らには煙草を消したばかりの灰皿が置かれていた。
「ここはダメだって、いつも言ってるのに。せめてしっかり換気扇回せよ」
慧「あ~、はいはい。スミマセンデシタ」
換気扇を全開で回し、空気を入れ替える。
慧「紡は?」
「もうスヤスヤと寝てたよ」
慧「だろうな」
「分かってんなら聞かなくても」
そう返すと、別にいいじゃないかと慧太が笑う。
慧「明日・・・家事当番、変わるぞ?」
俺が変わってやる事は多くても、逆の事はほとんどなかった慧太の発言に思わず目を丸くする。
「どういう風の吹き回し?」
慧「べっつに~?自由人慧太サマの気まぐれ・・・かな」
おかしな言い方に笑いが零れる。
「当番の交代は大丈夫だよ。明日からは、ちゃんとしっかりするからさ」
慧「でもお前・・・」
「大丈夫・・・今、紡に約束して来たからね。サンタクロースとの約束、ちゃんと守るから・・・って」
落としたばかりのコーヒーの香りに鼻をくすぐられながら、俺はそう返した。
慧「へぇ~・・・寝てる相手に、ラブラブオーラ発揮して来たって事か」
からかうように言う慧太は、それでもどこか俺を心配する様な顔を見せる。
「こういう時だからこそ、だよ。それに梓とも約束したからね」
慧「梓ちゃんと?何を?」
「来世で・・・一緒になろうって」
俺の言葉に慧太は1度大きく瞬きをして、ニヒルに笑う。
慧「来世で、ねぇ。さすがイケメン王子の言うことはちがうぜ」
「何言ってんだよ。同じ顔してるクセに?」
慧「どうだか?」
「いや、同じだから・・・」
俺は、その来世を楽しみに・・・今を必死に生きる。
慧「男意気はオレの方が上だな」
「どうだか?」
明日からは、今までと何も変わらない日常を送る。
ただ、紡の為に。