第11章 ハートの秘密 ( 城戸 桜太 )
慧「桜太、お前オレに負けず劣らずイイ体してるよなぁ」
「悪いけど、俺にはそっちの趣味はない。それから、俺は慧太に負けてるとも・・・劣ってるとも思っていない」
慧「さっきまで死にかけてたのに、今度はご機嫌ナナメと来たか。忙しい感情だな、オイ」
・・・ほっといてくれよ。
「で?俺のシャワー覗く程の急ぎの用事って、なに?」
慧「あ、それな?シャワーついでに掃除しちゃってくんね?」
「は?」
掃除?
今から?
慧「それから、オレのヤツ、詰め替え買って来たから、それも」
「それは慧太がやればいいだろ?それに掃除って・・・」
慧「固いこと言うなって。ま、頼むわ」
そう言って慧太はシャワールームのドアを閉めた。
「あ、おい!」
・・・突拍子もないこと言い出して。
慧「あ、言い忘れた」
ドアの向こうから、慧太がまた声を掛けてくる。
「・・・今度はなに」
慧「ごゆっくり~」
・・・・・・・・・。
ケラケラと笑う慧太の影に、ガラス越しに思いっきりシャワーをかけてやる。
何なんだ、今日の慧太は。
まぁ、いい。
とりあえず今やるべき事は・・・頼まれた数々の事。
1度ドアを開け、タオルを腰に巻いて作業に入る。
手際良くこなしていると、そう時間がかかる事でもないし。
普段からみんなで順番にやってる事だから、目立った汚れもない。
「よし!キレイになった」
ひとり声に出してみて、急に気恥ずかしくなり・・・もう1度黙ってシャワーを浴びた。
出際に浴室乾燥のスイッチを入れ、髪を乾かしながら洗濯機を回す。
干すのは、慧太に・・・
・・・いや待てよ?
慧太、わりと適当なところがあるから・・・やっぱり俺がやるか。
紡の学校のシャツや俺のは、朝までにアイロン掛けすればいいし。
やめよう。
この主夫脳・・・どうしたら止まるんだ・・・
パジャマ代わりのラフなTシャツに袖を通し・・・ふと、思考が止まる。
「暑い・・・」
紡はさっきあのまま寝てしまっただろう。
とすると、起きてるのは慧太だけだから。
火照りが引くまでは、このままでも・・・
「今夜くらい、いいかな」
小さく呟き、ハーフパンツを手に持ったまま脱衣所を出た。
リビングまでの廊下の空気が冷やりと心地いい。
食事・・・っていう気分じゃないのは変わらず。