第10章 未知との・・・遭遇? ( 山口 忠 )
この先は階段を降りた所の大きな鏡があるだけだ!
そこならオレは全然怖くない。
掃除当番で毎日の様に磨いてたから!
オレが磨いてるってコト、気付いてくれてる・・・かな?
端が少しひび割れてるけど、城戸さんがそこを通る度に服装とか、前髪とか、なんかいろいろそういうのをチェックしてるのを見かけて。
掃除当番の時に率先してその場所を担当してた。
もしかしたら・・・通るかな?とか。
だから、あの鏡なら怖くない。
手を引いて、その鏡の前を一気に通過しようと早足になる。
ここを過ぎたら、すぐゴールだ!って。
さり気なく通りすがりに鏡を見て・・・
オレしか写ってない?!?!
ぎこちなく、振り返る。
そこには・・・知らない誰かが・・・立っていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
自分でも驚くほどの叫び声をあげ、手を振りほどき後ずさる。
ー バレちゃった・・・あと・・・少しだったのに・・・ ー
何かを言おうとしても、声にならず口がパクパクするだけで・・・
ー 騙してごめんなさい。でも・・・山口君と一緒にいられて、楽しかった・・・私、この鏡が大好きだった・・・毎日、鏡を磨いてくれて、嬉しかった・・・ ー
か、鏡?!
っていうか、だだだだだだ誰ッ?!
その人は、オレにそれだけ言うとすぅっと消えていった。
目の前の現実に、立っていられず座り込む。
オレ・・・今まで誰と一緒にいたの?!
城戸さんじゃなかったの?!
さっきまで繋がれていた手をじっと見ていると、離れたところからバタバタと廊下を走る足音が聞こえて来る。
『あっ!いた!』
菅「山口!大丈夫か?!」
見慣れた2人の姿に気が抜けて涙が浮かぶ。
「ス・・・スガさん、と・・・城戸、さん?・・・ご、ご本人、サマ?」
今の今で城戸さんの姿が目の前に来ると、ちょっと・・・ビビる。
菅「は?何言ってんだ山口は・・・頭でも打ったのか?」
『えっ?!痛いところとかない?大丈夫?ちょっとゴメンね』
ぺたぺたとオレの頭や顔を触る手が、ほんのり暖かくて、その手を握った。
「ちゃんと、城戸さんの手だ・・・」
『よく、分かんないけど、私は私だよ?』
そう言って、城戸さんは笑った。