第1章 〖 恋よりも、愛よりも 〗人気投票1位記念 城戸 桜太
「手が離せないって言ってるのに・・・」
慧「いいからコレ見ろ」
俺がキッチンから姿を見せると、慧太が夕方の情報番組を流しているテレビの音量を上げた。
〘 次のニュースです。イギリスで日本人初の子宮移植手術を受けた女性が、手術から19時間後の今日未明、死亡しました 〙
全身から・・・体温が抜けていく。
嘘・・・だろ?
〘 手術自体は成功したと昨日お伝えしましたが、残念です 〙
〘 確かまだ26歳と言うことでしたが・・・ 〙
〘 こればかりは我々医師もどうなるかは分からないんですよ。手術は成功しても、その後の拒否反応を乗り越えることが出来なければ・・・何とも・・・〙
コメントを話す人達の言葉が、どんどんと遠くに聞こえていく。
梓・・・嘘だと、言ってくれよ・・・
・・・誰か。
誰でもいいから・・・梓は無事だと、俺に・・・言ってくれ・・・よ・・・
誰か・・・・・・・・・
衝撃の大きさに、立っている事さえ上手く出来ない。
慧「桜太、ここはオレが片付けるからお前は部屋行ってろ」
慧太に言われ、初めて足元の惨状に気付く。
「あ・・・わ、るい。手が滑ったみたいだ・・・」
『ただいま~!あれ、2人してどうしたの?って、床が大変な事に?!』
「おかえり紡。ちょっと手が滑って・・・いま片付けるから」
『私も手伝うよ』
「大丈夫、ここはいいから紡は着替えておいで」
『でもみんなで片付ければ早く・・・』
「いいって言ってるだろ!!」
慧「桜太!!」
慧太の声に、ハッと我に返る。
目線を上げると、そこには怯えた顔をした紡が立ち尽くしていた。
「ゴメン紡、驚かせちゃったね・・・慧太、悪いけど後は頼むよ・・・」
慧「あぁ・・・紡、一緒に片付けるか?」
『・・・・・・あ・・・う、ん』
背後の会話に何も反応する事も出来ず、俺は黙ってリビングを後にした。
部屋に入り・・・ドアにもたれ掛かり大きく息を吐く。
立っているのもやっとで、力なく崩れて行く足を引き摺りながらベッドへ倒れ込んだ。
「梓・・・」
小さく名前を呼び、最後に見た顔を思い出す。
明かりもつけない部屋で、枕に顔を押し付け・・・
・・・・・・泣いた。