第8章 赤い糸の行き先 (及川 徹)
こんなにボロボロの姿じゃ、カッコつかないよ。
哀れな姿に、乾いた笑いさえ出てしまう。
『及川先輩?オレと・・・なんですか?』
キョトンとした顔でオレを見上げる天使ちゃんを見つめ、自然な笑顔が出た自分に驚く。
やっぱりオレは・・・天使ちゃんが好きだ・・・
でも今日は、伝えられない・・・
『及川先輩?』
「あのさ、紡ちゃん。オレとデートしない?」
『しません!』
超絶即答?!
「1回くらいデートしてくれても・・・」
『及川先輩って、いつもそればっかり・・・それに知ってますよ?及川先輩は女の子み~んなに、そうやって声かけてること』
「なな、何言ってるの紡ちゃん?そんな女の子み~んなになんて声なんて、か、」
・・・かけちゃってたよオレ!!
「プッ・・・心当たりがたくさんありそうね、及川?」
「・・・うるさいよ?」
「自業自得です!」
「あぁもう!!!!」
岩「ここにいやがったかグズ川・・・」
「い、岩ちゃん?!」
オレが入って来たと同じように、岩ちゃんがガラリとドアを開けて飛び込んで来る。
岩「一緒に帰るから待ってろって言っといて・・・ドンだけ探したと思ってんだこのボゲェ!!」
あ・・・わ、忘れてた!!
岩ちゃんと約束してたこと・・・
岩「思い出したみてぇだな?」
不敵な笑いを見せながら、岩ちゃんがゲンコツを見せてくる。
「あは、は・・・岩ちゃん?今日は卒業式だよ?!オレ達の門出だよ?!そんな物騒なもの見せ、見せるの、やめない?!」
そうオレが言っても、岩ちゃんは更にニヤリと笑いオレを見る。
岩「じゃあ、お前の新しい門出を祝って・・・の最初の1発だ」
「きゃぁぁぁ岩ちゃん?!」
振り上げられたゲンコツから頭を庇うように手で押さえ、咄嗟にしゃがむ。
岩「なんてな?」
あ、あれ?
「及川・・・アンタ岩泉に脅かされただけよ」
『及川先輩、きゃぁぁぁ・・・って・・・』
岩「テメェは女子か!」
オレを囲ってみんなが笑い出す。
「みんなで笑うとか、オレ泣いちゃう・・・」
岩「イチイチ女々しいわ!」
「痛ッ!岩ちゃん結局ゲンコツ!!」
「及川、アンタが悪い」
「みくちゃんセンセーまで・・・」
ゲンコツされた所を擦りながら立ち上がり、みんなの顔を順に見る。