第8章 赤い糸の行き先 (及川 徹)
ひと叫びしてから、コートに入りながら紡ちゃんの姿を見送る。
・・・え?!
紡ちゃんて、バレー部だったの?!
遅れてすみません!って挨拶しながら、シューズに履き替え準備運動をテキパキとこなしている。
「岩ちゃん見て!オレの天使が女バレに!」
岩「いいから練習しやがれバカ及川!」
岩ちゃんの怒号に女バレのみんながコッチを見て笑う。
その中に、天使ちゃんもいた。
ようやく練習に入っても、オレは天使ちゃんが気になって、暇さえあれば・・・いや、暇なんてないんだけど!
岩ちゃんの隙をついては女バレの練習をチラチラと覗き見てた。
天使ちゃん・・・リベロなんだ?
ちょうど1年生を混ぜた紅白戦をしていて、相手チームがどれだけスパイクを打ち込んでも、ことごとく拾い上げる天使ちゃんの頑張りにギャラリーも熱気が上がっていく。
「凄い・・・」
岩「あぁ、そうだな・・・ボールに対しての嗅覚が鋭いっつーか、反射神経がいいっつーか。ちっさいナリして、いつもよく頑張ってるよな」
いつも・・・って、岩ちゃん?
「あっ!!」
ちょっと目を離した瞬間に、相手も考えたのかライン際ギリギリにスパイクを打って来た。
ー ピッ! ー
拾えなかった天使ちゃんに、ギャラリーからため息が漏れる。
岩「あと少しだったな。指先は届かなかったが、あいつ・・・コースは読んでた」
「・・・そうだね」
思わず手が止まってしまう程の白熱したゲームに、男バレも見入ってしまっていた。
『あーっ!もう!悔しい!!』
起き上がりながら叫ぶ天使ちゃんを見て、周りにいた上級生がよく頑張った!と次々に肩を叩いて行く。
岩「男バレにも、ああいうヤツが欲しかったな
」
足元に転がって来るボールを拾い上げながら、岩ちゃんが零した。
『ボールは・・・あっ!すみませんっ!』
上がった息もそのままに、天使ちゃんがボールを受け取りにオレ達の所へ駆けて来た。
『すみません、ボール拾って頂いて・・・』
岩「あぁ、ホラよ・・・それにしてもお前、サポーターしてんのにあちこちアザだらけだな。部活終わったら、ちゃんと冷やしとけよ?」
岩ちゃんの言葉にオレも天使ちゃんの手足を見れば、確かに床で擦れて赤くなっていたり、いつ出来たのか分からない、アザみたいな物が幾つもあった。