第7章 〖 肌の記憶 〗 人気投票3位記念 城戸 慧太
桜「け、慧太・・・?随分と可愛らしい連れだね・・・」
小刻みに肩を震わせながら桜太が笑う。
「うるせぇよ、笑いたきゃ笑え。ってか桜太、車どこ停めた?」
早くパンダを何とかしたくて、桜太に車の場所を聞く。
桜「あぁ、すぐそこのパーキングにね」
「じゃ、後は頼むわ」
巨大なパンダを桜太に押し付け、オレはようやく身軽になった。
桜「大きなパンダさんだね、紡」
『来る途中で見つけて一目惚れ!慧太にぃに買って貰っちゃった!』
あぁいう一目惚れは、今度から桜太の時に頼むぜ・・・
桜「紡?パンダさん置いてくるから、何食べたいか考えてて?予約はしてあるけど、メニューは着いてから決められるからさ」
『・・・じゃあ、いちごパフェ食べたい!』
桜「それはデザートだろ?食事の後に頼んであげるから・・・」
『いちごいっぱいのパフェ食べたいのに・・・』
いちごパフェ、ねぇ。
ー つーちゃん、イチゴぱへ食べたい! ー
ー 飯だって言ってんだろが ー
いつかの小さな紡を思い出し、口元が緩んでいく。
『慧太にぃ・・・何ニヤニヤしてんの?』
「お前、変わってねぇな~」
『・・・何のこと?』
「べっつにぃ?」
『気になるじゃん!』
からかい半分、懐かしさ半分で紡を構う。
桜「慧太!お前はどうしてすぐ、紡をそうやって構うかなぁ・・・」
「ほ~ら、ラスボス桜太が現れた」
桜「・・・ラスボス?」
「コッチの話だよ」
ヘヘッと笑って、桜太の肩に手を乗せる。
『ね、早く行こう!いちごパフェが私を待ってる!』
「待ってねーよ!」
『待っててくれてる!』
桜「だからケンカしない!」
『だって慧太にぃが!』
「オレのせいかよ!」
桜「2人とも!!」
なんだよ、コレ・・・楽しいじゃん!
なんて事のない、賑やかな日常。
そんな毎日がオレの心を弾ませる。
『慧太にぃ、またニヤついてる・・・』
「悪ぃかよ」
『なんかヤラシイ・・・』
「お前ねぇ・・・パンダ返品すんぞ!」
桜「慧太!」
「へいへい」
止まることのないオレと紡の小競り合いに、桜太がまったくもぅ・・・と呆れながらため息を付いた。
「桜太、知ってっか?ため息つくと、幸せが逃げるんだってよ」